ほぼ全選手が涙を流す横で、ニコニコと笑う姿が印象的だった。17日に阪神大学野球の入れ替え戦を制し、初めて1部昇格を果たした大阪電通大。清田和正監督(52)は今年1月に助監督から昇格し、最初のシーズンで重い歴史のとびらを開いた。

「僕は何もしていないですよ。前任の鈴木(佑亮)監督や江草コーチがチームを作ってくれた。僕はたまたまこのタイミングで監督だっただけ。勝ちたい思いは強かったけど、まさか…。ほっぺたをつねりましたよ。選手におめでとうと言いたい」と照れ笑いした。

1勝1敗で迎えた入れ替え戦。初体験の選手ばかりの中で、苦戦が予想された。「選手が朝、どういう表情をしているか気になったんですが通常通りで。いい顔してました。これはやってくれるなと思った」。

大阪桐蔭のOB。入れ替え戦の前には1学年上の西谷浩一監督(52)から激励も受けた。東洋大、ミキハウスで現役を続け、引退後はミキハウスの監督、名古屋産業大の監督を経て大阪電通大へ。「今年は大阪桐蔭が甲子園で優勝して、東洋大は2部優勝。ミキハウスは都市対抗出場を決めた。個人的に全部乗っかろうと思いました」。

選手に出す指示は多くない。「我々は挑戦者らしく戦おう。攻撃も守備も、つねに攻めよう」。ベンチではプレーボールから終了まで全員が大声を張り上げた。ただ盛り上げのための声ではない。最後のピンチではベンチ、内野手同士、バッテリーが何度も何度も状況を確認。極限の緊張を乗り切った。選手たちが勝因として口にした「一丸」を感じさせるとともに、監督の指導が行き届いている印象を受けた。

「試合中、全員野球だな、と思いながら見ていました。いい経験をさせてもらった。みんなで神宮に行こうぜと言っている。次は、それが現実になるようにしたいですね」。阪神大学野球に新風を吹き込みそうな予感だ。【柏原誠】

1部初昇格を果たし喜ぶ大阪電通大・江本投手ら(撮影・柏原誠)
1部初昇格を果たし喜ぶ大阪電通大・江本投手ら(撮影・柏原誠)
7回1失点と好投した大阪電通大・小島遼太(撮影・柏原誠)
7回1失点と好投した大阪電通大・小島遼太(撮影・柏原誠)
右中間に決勝打を放つ大阪電通大・森広拓夢(撮影・柏原誠)
右中間に決勝打を放つ大阪電通大・森広拓夢(撮影・柏原誠)