大谷翔平を擁するエンゼルスが9日、MLB屈指の「エンターテイナー」と1年契約で合意を発表した。オリオールズからFAとなっていたブレット・フィリップス外野手(28)。米国では、レイズに在籍していた20年のワールドシリーズ第4戦でサヨナラ打を放ち、飛行機ポーズでグラウンドを走り回った愉快な姿で知られる。口癖は「ベースボール・イズ・ファン(野球は楽しい)」だ。

日本人にも、なじみがある。妻は元日本ハム監督トレイ・ヒルマン氏(60)の娘。義父と娘婿という関係になる。最速152キロの強肩で「米国の大谷翔平」を自称。昨年5月11日には大谷と対戦し、88キロのスローボールをフェンス直撃の二塁打とされ「アメリカのショーヘイが日本の翔平と対戦することを楽しみにしていた。どれほどのパワーを持っているか聞いていたが、フェンスを越えなかった。みんなにどちらが良いショーヘイか決めてもらおう」とジョークを飛ばしていた。

いつも明るい男が、涙を流したのは昨年4月12日のアスレチックス戦だった。自分のことが大好きなクロエ・グリムスちゃん(8)と始球式を務め、リストバンドをもらった。3回、クロエちゃんがテレビリポーターから母と一緒に観客席でインタビューされていた瞬間、フィリップスが右翼へシーズン初本塁打を放った。「メジャーリーグに来てから一番大きい当たりだった」という超特大アーチだった。

試合後のインタビューで、声を震わせた。「彼女がパワーをくれたんだ。神のようだ。スポーツには、こんなクールな瞬間がある」。クロエちゃんは2歳でがんと診断された。ソフトボールチームでプレーするほど元気になったが、3月にがんが再発したばかりだった。

ナイスガイの加入で、エ軍戦の中継が、今から楽しみだ。【斎藤直樹】

2022年5月11日エンゼルス対レイズ、大谷(手前)から左前打を放ったレイズのフィリップス(右)
2022年5月11日エンゼルス対レイズ、大谷(手前)から左前打を放ったレイズのフィリップス(右)