DeNA対阪神 6回から登板した島本浩也(阪神)(撮影・奥田泰也)
DeNA対阪神 6回から登板した島本浩也(阪神)(撮影・奥田泰也)

救援左腕の阪神島本浩也投手(26)が大仕事をやってのけた。1点差に迫られた6回1死一、二塁で登板。筒香、宮崎の主軸を連続で切り、ピンチをしのいだ。その姿にかつての左腕ストッパー・田村勤の姿を見た高原寿夫編集委員は「虎になれ!」で迫真の投球に迫った。

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島本の好投を見て、思わず「たむじい」のことを思い出した。スマホを手に取って連絡してみる。年齢より老成した表情から「たむじい」というニックネームだった田村勤。前日まで会っていたかのような調子で話し始めた。

「島本くんですね。いっときボクに似ているとか言われていた左腕ですよね。最近の野球はワンポイント起用とかあまりやらないですからね。左は当然だけど右打者でも抑えないと。ボクは右打者にはよっしゃ! って気持ちで向かっていきましたね」

92年、新庄剛志らを擁し、優勝を争った中村勝広率いる阪神。その中で左横手投げの変則投法を駆使し、ストッパーとして輝いたのが田村だ。現在は西宮市で整骨院を経営しながらアマ野球の指導も続ける。そんな男が話した「コツ」がこの日の島本にはすべて備わっていたといえる。

「きのう(23日)の入りはインコースのストライク。でもきょうは…」。日本の主砲・筒香嘉智との対戦はこれまで9打数無安打と抑えている。しかし研究されていることを予想し、まずはフォークで空振りを取る。これが自信になった。

「いける。あとはフォークでもストレートでも」。そんな思いで2球目、ストレートを詰まらせ、中飛に切った。これで終わらない。続く右の宮崎敏郎も強打者だ。カウント2-1からの4球目、147キロ外角ストレートで二ゴロに仕留めた。これでDeNAが反撃する流れをせき止めた。

「とにかく(コースが)甘くならないようにと。気持ちでいきました。今年一番しびれましたね」。取材に応じる前に小さくガッツポーズを取った島本。小さな体での大仕事だった。

育成上がりの島本には「2人のユタカ」からの期待がある。15年の宜野座・春季キャンプで臨時コーチを務めた江夏豊からグラブをもらった。「恵まれた体じゃないのに、いい球を投げてる」。江夏はそう褒めた。その前年の秋季キャンプでは、これも臨時コーチを務めた広島OB・大野豊から「体は小さいけど投げっぷりがいい」と激励された。2人のレジェンド左腕に何かを感じさせたのが島本だ。

大差で勝っていた前日23日は9回を筒香、宮崎を含む3人で切った。「やっぱり最後を締めるのは気持ちいいです。抑えとかそんなのは恐れ多いですけど投げるところで結果を出したいですね」。謙虚に話していたが、この日は間違いなくヒーローだ。これまで多くのブルペン左腕を生んできた阪神。島本が「令和のたむじい」になれれば、頼もしい。(敬称略)

DeNA対阪神 6回から登板した島本浩也(左)と才木浩人(撮影・奥田泰也)
DeNA対阪神 6回から登板した島本浩也(左)と才木浩人(撮影・奥田泰也)