2回表阪神無死一塁、打者高山俊の時に二塁を狙うもアウトとなる梅野隆太郎(撮影・清水貴仁)
2回表阪神無死一塁、打者高山俊の時に二塁を狙うもアウトとなる梅野隆太郎(撮影・清水貴仁)

おや? そんな感じで神宮球場の虎党が一瞬、キョトンとしたような場面だったのではないか。2回、阪神の攻撃だ。1回に青柳晃洋の失策をきっかけに2点を先制されたすぐ後の攻め。5番に入っていた梅野隆太郎がブキャナンから四球を選んで出塁した。

ここに来て、ようやく打線が上向いてきた阪神。先頭打者が出れば雰囲気が出る。ところが次打者・高山俊の初球、いきなり梅野は二塁へスタートした。微妙なタイミングで梅野は「セーフ!」とばかりに両手を広げたが判定はアウト。せっかくの無死一塁が1死走者なしになってしまった。

その直後、高山に二塁打が出たので余計、もったいなく見えた。終わってみれば2-4の試合。序盤に得点できていればなあ、と正直、思った。あれはどういう攻撃だったのか。

梅野は鈍足ではないが、それにしてもあの場面で盗塁とは。そんな疑問が出てくるのは否定できない。そこをはっきりと「あれはサイン」と言ったのはヘッドコーチの清水雅治だ。

「ちゃんとサイン出してますから。もう少しいいスタートを切ってほしかったなとは思います」。そう話した。梅野も「あれは自分としては勉強にして、またトライしていきたい」と同じ話をした。

しかしなあ、と思わないでもない。コーチや選手がこっそりではなく、堂々と「あれはサイン」と言うのは結構、めずらしい。そう考えれば、ひょっとして“真相”は違う可能性もゼロではないと思うのだが、そこのところは現在の時点では何とも言えない。

いずれにしても、いまの阪神には指揮官・矢野燿大が掲げる「超積極的野球」が根付きつつある。繰り返すが、あの2回、普通はじっくり攻めるところではなかったかと思う。しかし周囲がそう思うところでベンチにも選手にも何か仕掛けてやろうという気持ちが芽生えているということだ。

結果として、この日はそれが失敗した。念のため、積極的に攻めているから失敗してもいいんだと言うことではない。ここも「是々非々」ではある。それでも指揮を執る者がポリシーを掲げ、それに応じた戦いをするのは重要だ。それがなければどうにもならない。

ベンチで明るく振る舞う矢野も、負けていれば当然、深刻な表情になる。苦しい戦い、きつい思いをしながらも積極的な姿勢は続けていってほしい。(敬称略)

2回裏終了時、阪神矢野監督(左)に声をかけられる梅野(撮影・横山健太)
2回裏終了時、阪神矢野監督(左)に声をかけられる梅野(撮影・横山健太)