中日対阪神 9回表阪神2死、福留孝介(手前)の中飛でプロ初勝利をあげベンチでガッツポーズする梅津晃大(左)(撮影・上田博志)
中日対阪神 9回表阪神2死、福留孝介(手前)の中飛でプロ初勝利をあげベンチでガッツポーズする梅津晃大(左)(撮影・上田博志)

13日の中日-阪神戦(ナゴヤドーム)はテレビ大阪で中継される。その実況に特別な気持ちで臨むのが同社のアナウンサー・植草結樹だ。植草にとって“社員アナ”として最後の実況になる。現在59歳。来年1月の誕生日で60歳になり、その月末に定年を迎える。

植草の父親は「甲子園は清原のためにあるのか!」などの名言を生んだ高校野球実況で知られる元ABCアナの植草貞夫だ。結樹の長男も現在、沖縄テレビのアナウンサーで3世代アナ一家である。

「途中入社でテレビ大阪に縁があって。山あり谷ありだったですね。でも大きな会社ではない分、いろいろな仕事をさせてもらって楽しかったです。でもこれで最後という実感はないですね。本当にあっという間でした」

この放送、解説は猛虎のレジェンド江夏豊だ。普段、江夏が担当する試合はゲスト解説者が参加する。しかし13日は「最後だから2人で」と江夏の発案が実現したという。92年6月のヤクルト戦(神宮)を植草が初実況したときも隣には江夏がいた。

この日、ナゴヤドームで植草と話しながら、いろいろ考えた。あっという間か。サラリーマンはみんなそう思うのかな。年齢的に少しだけ後輩のこちらも感慨深かった。

そうは言っても勤め人の仕事人生はまだ長い方だろう。野球選手に比べれば。10年プレーできる選手の方が少ない世界だ。阪神、中日で指揮官を務めた闘将・星野仙一はお茶を飲みながらよくこんな話をした。

「現役が終わってから思うんや。みんな。ああすればよかった、こうすればよかったってな。そう思っても遅いんだけどな」

この日の阪神もそうかもしれない。あっという間に負けてしまった。2時間30分。こちらは文字通り、試合時間の話だが。初モノに弱いのは知っているけれど、それにしても…。広島に連勝した勢いはどこへ行った。本当にどうなっている。虎党もガックリだろう。

あると思っているうちになくなるのが時間だろう。おカネもそうだけど。試合数も。あと35試合。それにしても中日戦である。6勝12敗のダブルスコア。現状、阪神より下位にいるチームにこれほどやられて借金が減るはずもない。江夏と植草にいい実況をしてもらうため、もちろん虎党を喜ばせるため、気合を入れろ! タイガース!!だ。(敬称略)

中日対阪神 円陣の中心で話す福留(撮影・上田博志)
中日対阪神 円陣の中心で話す福留(撮影・上田博志)