広島はいいところである。セ・リーグ本拠地の中でも選手、関係者に人気のある土地だ。お好み焼きなどのいわゆるB級グルメも充実しているし、人情もある。マツダスタジアムの雰囲気もいい。現在はコロナ禍で観客数も制限されているが甲子園同様、1度は行った方がいい球場だと思う。

だからというわけではないが、その広島で「他球団が元気になっている」という説が、一部のカープファンを中心にささやかれているようだ。

「相手球団がマツダに来ると調子を取り戻して帰っていくとかいう話になっているみたいですね。まあカープの地元での勝率がよくないから、そうなっているだけのことですが…」

3連覇を達成した広島監督を昨季限りで勇退。現在は日刊スポーツ評論家として活動する緒方孝市はそんな話をした。現場は退いたがカープの赤い血が流れている人間として悔しそうだ。

広島は借金生活を続けているので相手からすれば戦いやすいのは当たり前かもしれない。それでも3連覇時代、マツダスタジアムに来ることをみんないやがっていたことを知る立場からすれば、興味深い。

例えば中日だ。7月28日からの3連戦で1勝1敗1分けに終わっている。中日はそこまでの9試合を2勝7敗とどん底状態だったがマツダで負け越さなかった。その次のヤクルト戦で2勝1分けとひと息ついた。

さらに巨人だ。7月14日からの広島3連戦で3連勝。そこまでの3カードで雨天中止もあったが2勝しかできず、首位から陥落。開幕からのダッシュが途切れそうな雰囲気になったところ、マツダでの3連勝で息を吹き返している。

そう言われれば「なるほどね」と言うしかないが考えてみれば発端は他でもない阪神だった。7月3日の広島戦が雨天中止になった。そこまで2勝10敗の借金8で泥沼の最下位に沈んでいた。しかしその雨でひと息つき、翌4日のデーゲームでスライド登板となった大瀬良大地を打ってから一時は貯金をつくるところまで戻してきた。

ここまで書けば、もう言うまでもない。広島、マツダスタジアムには申し訳ないけれど、そんな「ジンクス」にのって、あと2試合もらって5割復帰したい。どちらに転ぶか分からない、もったいない試合を落とした日だからこそ、そう思ってしまう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)