勝手な感想で書くのだが7回、失策した後の小幡竜平は「それがどうした」という風に見えた。それまで踏ん張っていた西勇輝がこの失策をきっかけに4失点。結果として楽勝ペースが接戦になった。

何しろ高卒2年目だ。ミスをして、それが得点に結びついて。本当ならビビッてもおかしくないところだ。しかしその後も特に影響なくプレーしていたところを見ると、こちらの見立てもあながち外れていないかもしれない。

小幡の担当スカウトは田中秀太である。選手時代から取材し、よく知る存在だ。18年のドラフト2位で入団した後、小幡についてどんな男か、聞いてみたことがあった。秀太は面白いことを言った。

「阪神にはいないタイプですね。ウチの若いコはみんな素直というかコーチとか先輩とかにハイッ、ハイッっていう感じの選手が多いでしょ。その点、小幡は違います。何か文句言われたとしても『はあ~?』って言う感じですわ。ずぶといというかね」

そんな話を聞いていたので最近、起用が続く小幡の様子を見ていて「なるほどな」と納得していた。高卒2年目なのに「守りがいい」という理由で1軍に抜てきされるのは、なかなかのことだ。そして期待通り、小憎らしいぐらい落ち着いてプレーしているのだから相当なもの。そこで秀太の言葉を思い出したのだ。

ずぶとい男には野球の神様も味方するのか。西勇輝のスクイズにつなげた2回の右前打は効果的だったし、6回の適時打は巨人を1点だけ上回る5点目となった。失策はしたが4回、松原聖弥のイレギュラーっぽい二ゴロをさばくなど、うまさは感じさせた。

楽しみなのは秀太が小幡を球団に推薦した最大の理由だ。スカウト会議で「ショートを取るなら小幡」と主張している。18年のドラフトには大阪桐蔭・根尾昂(中日)報徳学園・小園海斗(広島)がいた。そんな面々と比較し、自身、遊撃手だった秀太が「ショートなら小幡」と太鼓判を押したことは興味深い。

この試合、途中で三塁に回った小幡だが、現在、ほぼ二塁で試合に出ている。“本職”ではまだスタメンがない。打撃との兼ね合いなのだが木浪聖也もウカウカしていられないということだ。今季やられっ放しの巨人に僅差勝ちし、新星も光った。とりあえず気持ちのいい夜だった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)