「めでたいやないか」。人の意表をつくことが好きだった闘将・星野仙一なら、このタイミングでそんな風に言ったかもしれない。前半戦ラストは敗戦でのフィニッシュ。指揮官・矢野燿大が言っていた「スッキリ終わりたい」という願いはかなわなかった。

それにしても、よう負けるなあ。虎党はそんな感覚だろうか。交流戦が明けてからここまでの8カードで勝ち越せたのは中日、ヤクルト相手に2カードだけ。“分け”が1つあるので5カードで負け越した計算である。負けてばっかりやなあ…という感覚は正しい。

それでも首位に踏みとどまれているのにはいくつかの理由があるだろう。その1つが大きな連敗をしていないことだ。ここまでワーストは3連敗。それが2度だけ。そのため、一気に陥落とはなっていない。

それと同じにしていいかどうかは分からないけれど圧勝だった03年の星野阪神も、当然だが、ほとんど連敗しなかった。それでも「9・15」の胴上げまで5連敗も4連敗も喫している。

その最初の3連敗となったのは同年8月9日の広島戦だ。以前の広島市民球場で、現在のカープ監督である佐々岡真司に打線が抑えられ、敗戦。そのとき星野は我々、虎番担当キャップにこんな話をした。

「今季初の3連敗やと? めでたいやないか。だから今があるんや。選手を責める必要は何もない」。確かに8月序盤まで3連敗がなかったのだから圧倒的な強さだった。もちろんマジックもすでに出ていた時期である。闘将が、そう不敵に笑ったのも当然かもしれない。

それでも、と思うのだ。結構長い間、勝ち越しがなく、チーム状態も落ち込んでいるのに今季はまだ首位にいる。響きのいい「首位ターン」だ。闘将流に言えば「開幕からの頑張りがあったからこそやろが」ということになるかもしれない。

もちろん、まだシーズンの半分だ。それでも優勝に一番近いところにいるのは阪神である。なにしろ首位なのだから。チーム状態が悪くなってきたところで球宴ブレーク、そして誰も経験のない五輪ブレーク。学校の夏休みでもあるまいに、こんな時期にプロ野球がストップするとは。だが、それが現実。その“運”を生かし「2度目の開幕ダッシュ」を目指すだけだ。歓喜の瞬間を目指して。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)