あらためて野球名鑑を見直した。近本光司171センチ、中野拓夢171センチ、そして糸原健斗が175センチ。失礼ながら実際に接した感覚からすれば「少しさば読んでる…?」と思わないでもないが、要するに、この世界では小兵の部類だろう。

さらに3人とも大学から社会人を経てのプロ入りだ。自らを雑草と思っているかどうかはともかく、高校や大学から上位指名で入団してきた、いわゆるエリートではない。そんな面々の活躍で日本のエースともされる菅野智之を打ち崩した試合である。

小兵で巨人に勝った。佐藤輝明、大山悠輔らがガツンとぶちかまして勝つ試合もいいが、こういうゲームも味わいがある。そして間違いなく大きな勝利だ。

それにしても圧巻だった高橋遥人の好投。9回は別にしてほとんどをゆったりとした気持ちで見ながら、ある感慨にとらわれていた。あの東京ドームで頑張ってるやないか。エエぞ。そんな気分である。

指揮官・矢野燿大の過去2年間、阪神は巨人に苦しめられた。19年が10勝15敗、20年が8勝16敗。大きく負け越したが、これは敵地・東京ドームの結果も響いている。それぞれ5勝8敗、3勝9敗とコテンパンにやられた。このコラムでも「こんなG戦でいいのか!」と書いた。

奮起を誓った矢野の「勝負の3年目」は苦しい戦いを続けながらも踏ん張っている。巨人戦はこれで10勝9敗2分けと1つ勝ち越し。さらに東京ドームでも、だ。これが今季8試合目。4勝3敗1分けとなり、ここでも1つだけ貯金をつくることに成功した。

残りは26日と10月の3連戦だ。この4試合を2勝以上でカードも敵地でも勝ち越せる。それがどうしたと言われればそれまでかもしれないが「巨人を倒すエネルギーで優勝する」と宣言していた矢野にすれば意味のあることだろう。

さあ3戦目だ。メジャーに行きたかった菅野を打ち、米国帰りの山口俊をたたいて巨人に引導を渡すときだ。また小兵が暴れるのか。それともこの日、沈黙した大山や耐える日々が続く佐藤輝、あるいは助っ人たちが爆発するのか。

「強気で、楽しんで、全員で一丸でかかっていく。ボクたちの野球をしたい」。しかめっ面が続いていた矢野も勝利監督インタビューでようやく少し笑顔を見せた。殊勲者は誰でもいい。ここは一気に行け。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)