「みなさんに元気を届けて、そして最後には優勝します」-。指揮官・矢野燿大が「優勝」の2文字を口にしたのは9月26日、巨人を下した後のことだ。あれから2週間が経過した現在。ヤクルトの優勝マジックがひと桁の「9」になった。虎党からすれば悪夢のような思いだろう。

矢野がそう言った時点でヤクルトにゲーム差なしの2位。「優勝宣言」には少しタイミングが違うような気もしたが巨人を倒し、高揚感に包まれた中でそう言っておかしくないムードが流れていたのも事実だ。

しかし、そこからわずか2週間でこの状況だ。振り返れば巨人戦後の広島3連敗が痛かったし、大きな反省点なのだが、なにしろヤクルトが考えられないような強さを発揮している。

だからこそ直接対決でたたくしかない。そんな思いで乗り込んだ「10・8」。神宮3連戦だった。対戦別でも神宮での戦績も阪神が優勢。「ここは一気に…」と期待したが前年最下位からの下克上優勝を目指す相手の勢いを止められず、負け越しとなった。

4時間を軽く超える死闘となったこの日はヤクルトを上回る15安打を放ちながら4得点に終わった。3、6回の満塁機を逃すなど、ここ一番での1本が出なかったのだ。

ヤクルトと次の対戦は今月19日から本拠地・甲子園での2連戦だ。「10・8」に次ぐ直接対決は「10・19」。プロ野球史に残る日付に直接対決が続くのも因縁である。

問題は“そこまで、もつのか”ということになってきた。12日から阪神は東京ドームで巨人3連戦、ヤクルトは名古屋で中日3連戦。次の対決まで阪神5試合、ヤクルトは6試合だ。その結果次第では一気にマジックが減り「10・19」の前に敵将・高津臣吾が宙に舞う可能性もある。

いよいよ最後の天王山として「10・19」を迎えられるのか。それともクライマックスシリーズでの準備に切り替える試合になってしまっているのか。

この日、佐藤輝明が4試合ぶりにスタメン出場した。10人攻撃の4回には「1人2死」となるなど無安打。その裏、投手交代に伴ってベンチに下がった。それでも佐藤輝がいるといい空気が流れるから不思議だ。相手もイヤなムードを感じている気もする。追い込まれ、何にでもすがりたい今。攻めの気持ちで佐藤輝を起用してほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)