何という試合だ。悪夢のジェットコースターと例えるか。めちゃくちゃというべきか。虎党にとっては地獄のような開幕戦だ。最大7点差を終盤にひっくり返されての逆転負け。スタートダッシュに成功しながらまくられた昨シーズンそのままのような展開である。

「紙一重です。勝負は常にそうですから」。広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が3連覇中、しょっちゅう口にしていた言葉だ。どんな大勝のあとでも「いやいや。紙一重です」と繰り返した。ゲームセットまで気持ちを緩めることは許さなかった。

序盤は完全に阪神ペース。差が出たポイントは守備にあったと思う。阪神は1回無死二塁でヤクルト青木宣親の放った二ゴロを糸原健斗がこぼし、ヒヤッとさせたがなんとかアウトに。1点を先制され、なおも2死一、二塁で長岡秀樹の中途半端なところに上がった飛球を遊撃・中野拓夢が背走キャッチ。これで先発・藤浪晋太郎を救った。

反対にヤクルトは2回無死一塁で糸原の遊撃への当たりを若い遊撃手・長岡が捕れず、そこから失点。さらに4回にも守備の乱れが出た後、糸井嘉男の2ランが出た。この時点で8-1。勝負あった-。この日に限っては「両軍守備の差が出た」という流れのはずだった。

しかし救援陣が試合を変えてしまう。阪神2番手・斎藤友貴哉が1死を取った後、村上宗隆を四球で歩かせてから、様子がおかしくなった。サンタナに1発を浴びるなどこの回、4失点。初登板のケラーはこの流れを断ち切れず、無残な逆転負けである。

1発がこわい村上ではあるが、極端な話、あそこで被弾しても1点。斎藤にすれば歩かせるよりよかったのではというのは結果論にしてもリードの展開で出た中継ぎ投手が3人で計7失点では試合にならない。

ブルペンの課題がいきなり噴出し、開幕戦を落とした阪神。厳しいスタートになったが気落ちしている場合ではない。阪神は昨年、開幕カードでヤクルトに3連勝したが結果は承知の通りだ。勝てば弾みのつく開幕戦も負ければ「143分の1」と思うしかない。

闘将・星野仙一の下で戦った03年も、岡田彰布で勝った05年も、開幕戦は負けている。その後、開幕戦に勝って優勝したシーズンは阪神にはない。打線はまずまずのスタート。ここは切り替えていけ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト1死一塁、ドミンゴ・サンタナ(右)に中越え本塁打を浴びるカイル・ケラー(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 9回表ヤクルト1死一塁、ドミンゴ・サンタナ(右)に中越え本塁打を浴びるカイル・ケラー(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 8回、ベンチから試合を見る藤浪(中央)ら(撮影・上山淳一)
阪神対ヤクルト 8回、ベンチから試合を見る藤浪(中央)ら(撮影・上山淳一)