おっ。選んだな。思わず、そう口にしたのは5回。佐藤輝明が四球で歩いた場面だ。2死走者なし。日本ハムの2番手、左腕・福田俊との対戦だ。初球をファウルするなど3球目までに1ボール2ストライクと追い込まれたがそこから誘ってくる外角の変化球を見極め、一塁に歩いた。

前日までの日本ハム戦2試合で四球はなかった。3戦目で選んだことで佐藤輝はセ5球団に加え、ここまで交流戦で対戦したパ4球団の合計9球団すべてから四球を選んだことになる。いつかは「全球団本塁打」が期待される打者だが、勝利ということを考えればこれも立派な結果だ。3回に先制決勝打となる適時打をマークしたが、ダメ押しの4点が入った8回は四球を選んだところから始まっているのだ。

これで佐藤輝の四球は今季19個目となった。昨季は126試合に出場して25四球。今季はまだ59試合目を終えたところなのでハイペースなのが分かる。佐藤輝といえばなんでもかんでも振りまくる印象が強いが、いつまでもそうではない。少しずつ成長というか変化しているという証明だ。

同時に感じるのは佐藤輝がじっくり四球を選べる状況になってきた、ということでもある。ビッグボス新庄剛志を甲子園に迎えたこの3連戦、大当たりだったのは大山悠輔だ。現在は4番佐藤輝、5番大山。この状態なら佐藤輝もきわどいところは見ていこうと言う気になるはず。結果としてつながっていき、これが本当の意味で“打線”になりつつある。

佐藤輝個人にとっても、それが2年目で過去最長の「9試合連続安打」という結果に出ているのだろう。佐藤輝は虎番記者たちの取材に「なんすかね、頑張ってます。毎日、必死に頑張ってます」と答えたそう。思い切って打ちにいくこと以上に粘って球を見極めるのは厳しいということを実感しているのではないか。

7日からは交流戦ラストスパートの2カードだ。阪神と交流戦3位のソフトバンク、そして広島に敵地で3連勝して意気上がるオリックスとの6試合である。リーグ戦再開に向けて重要なこの期間、佐藤輝には選球眼をもって打線を活気づけてほしい。

繰り返すがくさいところは捨てて甘い球はガツンと1発。今季は「11球団本塁打」は無理だが「11球団四球」は達成できる。それが実現できるか楽しみだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)