内輪の話だが興味深かったので少し触れたい。2日DeNA戦(京セラドーム大阪)でのことだ。阪神の場合、勝てばテレビによる指揮官・岡田彰布への勝利監督インタビューがある。その後、虎番記者の“囲み取材”と続く。こちらはカメラがないだけに本音というか、ポロリと面白い話も出たりする。敗戦ならすぐに囲み取材となるのが通例だ。監督の気分で取材を受けないこともある。

その敗戦後。囲み取材で記者の1人からこんな質問が出た。「右投手(ジャクソン)が先発でしたが、こういうパターンもありますか?」。すると岡田はムッとして言ったのである。

「なんで? ノイジー、先発したらあかんの、右ってだけで。なんで? 誰、先発してもかまへん、なんでよ。右投手なら左いかなあかんの?」

この世界には「右対左」「左対右」に絶対的にこだわる人がいる。しかし必ずしもそれが結果につながるわけではない。岡田が言っていることは正論だ。だが記者もそれは知っている。ここでそう聞いたのは“伏線”があったからだ。

今季、注目される前川右京の存在である。開幕を前に前川について岡田はこう言っていた。「使うよ。右(投手)なら」。実際、巨人戸郷翔征が先発した開幕戦は前川がスタメン。2戦目は左のグリフィンにノイジー、3戦目は右の高橋礼に前川と続いていた。

だから右腕に対し、ノイジーだったので「こういうパターンも?」と聞いただけ。「あるよ」とでも言えば終わりかなとも思うのだが、そこは選手起用にこだわりを持つ岡田だ。いらん口を出すな、と思ったのかもしれない。

そして、この日。先発の右腕サイスニードに対し、左翼スタメンはノイジーだった。前日4日のDeNA戦では中川颯を相手に前川を5番起用。2安打と結果を出していただけに「前川ちゃうんや…」と思ったが、そのノイジーが先制2ラン含む3打点。シーソーゲームの中で貴重な役回りを演じたのである。

データ的には特に相性がいいわけでもないと思うが、ここは岡田の“超能力”が発揮されたと言えば大げさか。もちろん練習から常に選手の調子を観察していることは言うまでもないが…。いずれにせよ2年目の助っ人か、期待の若手かという開幕前から話題の競争が続いているということ。これは歓迎だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一塁、左越え2点本塁打のノイジー(右から3人目)をタッチで迎える岡田監督(同2人目)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 2回表阪神無死一塁、左越え2点本塁打のノイジー(右から3人目)をタッチで迎える岡田監督(同2人目)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神 8回表阪神1死二、三塁、ノイジーは右犠飛を放つ(撮影・藤尾明華)
ヤクルト対阪神 8回表阪神1死二、三塁、ノイジーは右犠飛を放つ(撮影・藤尾明華)