波に乗れんなあ。そんな気持ちが強くなる日々だ。前日「この引き分けは阪神に分があるのではないか」と書いた。一般にドローは上位に有利だが、追いついて引き分けに持ち込んだことで流れが変わるかも…と期待したからである。

そして、この日の1回だ。中日メヒアから中野拓夢、大山悠輔が四球を選び、2死一、二塁。ここで5番・佐藤輝明が広いバンテリンドームの右中間を深々と破る適時二塁打を放った。これで2点先制。前日の粘りをつなげる、幸先のいいスタートだった。

先発・大竹耕太郎も抜群の立ち上がり。緩い球も折り混ぜ、中日打線を見下ろす感じでスイスイと好投。5回を終えて、散発4安打の無失点もそうだが球数も「57」と完封、完投を期待できるペースだった。

しかし、これが勢いの差なのか。徐々に様子が変わってくる。「らしくないな」と思ったのは4、5回の攻撃か。まず4回。追加点の欲しいところで佐藤輝が右前打。しかしノイジーのところで二盗を試み、刺されてしまう。ノイジーは歩いたが後続はなかった。

ここは走る場面なのか、これまでのスタイルからすれば少し不思議に思った。しかし立ち直りつつあったメヒアを揺さぶろうとしたのかもしれないし、これは仕方がない。もっとよくないのは5回だ。

この回、先頭の木浪聖也が内野安打で出塁。これを大竹が送れず、走者が入れ替わる形で1死一塁に。ここで期待の近本光司が一ゴロ併殺を放ってしまう。結局、3人で攻撃終了。昨年、好調のときならあまり見なかった攻撃が2イニング連続で続いた。

こういう攻撃は当然、投手にも無関係ではないのだ。6回、先頭打者に4球で四球を与えてから突然、崩れた大竹のメンタルに影響したかもしれない。昔から「攻守は一体」といわれるゆえんでもある。

これで14試合を終えて5勝8敗1分け。14日の中日3戦目でカードひと回りになるが、そこでの「借金」は確定した。球団史上初のリーグ連覇を目指す今季、苦しいスタートとなったのは否定できない。

しかし、まだシーズンの1割が終わったばかり。状況は必ず変わるはず。指揮官・岡田彰布の野球哲学は「苦しいときこそ、今まで通りやる」だ。ここは腰を据えて戦ってほしい。気持ちよく甲子園に戻るためにも14日の3戦目は大事だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)