面白い試合だった。終盤に3点差をつけられ敗色濃厚。「あかんな。でも8回に森下(翔太)とテル(佐藤輝明)に回るからな…」。虎党はそんなことを思っていたのではないか。
はたして8回、その2人が巨人・大勢から連続本塁打をマーク。ここで5番・大山悠輔にも1発が出れば新たな「3連発」の伝説が生まれただろうが、さすがにそうはうまくいかない。この日も解説していた前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)はかつて「3人目が難しいんよ」と85年の「バース・掛布・岡田」の3連発を振り返ったものだ。
本塁打が2人の実力なのは言うまでもない。だが、そこへの“流れ”を作ったのは別の選手だったような気もする。中川勇斗だ。7回1死一、二塁で代打に出てセンターへのライナーに倒れたのだが、その様子が興味深かった。
打球を追いながら中堅手がキャッチするのを確認すると「あー! もー!」というように叫び、右こぶしで自分の右股の辺りをたたいたのである。当然とはいえ、そんなに悔しかったのか。こういう様子を見せる選手はいまの阪神にはめずらしいかもしれない。少しだけ聞いてみた。
「悔しかったというか…。もう必死なんで」。険しい表情で中川はそう話した。大きな体ではないが「フルスイング」を大事にするタイプ。巨人の3番手・中川皓太の投じたフォークをいきなり2球、豪快に空振りした。そこからファウルで粘り、8球目をコンパクトにセンターへはじき返したのである。
しかしライナーは野手の前で弾まず、中飛に。その瞬間、悔しさを爆発させたのだ。独走するチーム状況。主軸は成績を出そうと頑張っているが、今後の生き残りへ向け、中川はチーム状態とは関係なく、必死で戦っている。
「長い間、打席に立っていなかったんで。ボールを見ていくと言うよりは振ってタイミングを合わせていこうと思って」。20日の中日戦(京セラドーム大阪)に「6番・左翼」でスタメン出場して以来の出番だ。そんな状況を受けての打席内容を説明。最後はきっちりとミートを心がけたものの結果は出なかった。
しかし、この様子が沈黙しかかっていた打線に点火したような気もするのだ。中川だけではない。埋もれてきた戦力は目をギラギラさせ、まだまだ暴れる機会を待っている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




