「試合があった中で1面にしてもらってありがとうございました」-。29日付の日刊スポーツ(大阪版)で「引退」を報じられた原口文仁はそう言って、こちらに感謝を示してきた。この時代、そんな表現のできる選手は本当にめずらしいなと思う。
「真面目としか言いようがない」「本当に真面目な男」…。球団関係者の誰に聞いてもそういう表現しか出てこない。もちろん、それは知っている。何か違うところはないかな。そんな風に思って話を向けても、みんな、そう言う。
真面目と言えばそれまで。だが他者に対する配慮はズバリ言って「オレが、オレが」が当たり前のように感じているこの世界では、きわめて異例だったのかもしれない。
そんな原口がここまで野球に打ち込めたことは「ただ好きだったから」。この日、引退会見でそう話していた。好きだったというか続けられたことが、うれしかったという。子どもの頃、親からいろいろな習い事をさせてもらう機会を得たが、野球以外は続かなかったそうだ。
「何をやっても三日坊主で。野球だけは違った」。何を習ったのか。「卓球に書道、柔道もやったかな」…。どれも続かなかったという。子ども時代にはありがちなことで「原口少年」の様子が思い浮かぶようで、なんだか楽しい。
それほどの選手ではないという謙虚な姿勢もあって後輩に対して説教じみたことは言わない。常に態度で背中で示してきた。そんな原口が「もし後輩には伝えたいことがあるとするならば、どんな言葉になる?」と聞かれたときは、こんなことを言った。
「これだけ満員の甲子園で(プレー)できる幸せを日々感じて。ファンのみなさまあってのプロ野球なので。そういう意味でタイガースはすごくファンのみなさん熱心にどんな時も応援してくださるんで。そういったことで本当に感謝を忘れず、強いタイガースをたくさん応援してもらえるように頑張ってもらいたいです」
この言葉がすべてを表していると思う。今季、阪神の行く球場は、まず、どこも満員だった。12球団NO1の注目度。ときにはそれが苦しくなることもあるだろう。それでもプロである以上、こんな幸せなことはないのでは-。そんなことを後輩に伝え、原口はユニホームを脱ぐ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




