勝った日、それも会心の勝利を収めた試合の後にこんなことを書くのは少し気が引けるのだが佐藤輝明のことだ。この試合、ヤクルト山野太一、拓也の前に4打席4三振を喫した。主砲で看板選手という存在は他球団にもそうはいない。だからこそ常に安心できる姿を見せてほしいと感じた。
ヤクルトの前に大敗を喫した前日28日から気になっていたことだ。その試合、最終回の攻撃、2死満塁で佐藤に打席が回る。ここで左腕・田口麗斗の前に気配のない空振り三振を喫し、ゲームセットに。
その場面は5-10と5点差になっていた。もしも虎党が狂喜乱舞するような1発が出ていたとしても、まだ1点差である。こういう大量点を追う場面に接すると思い出すのは前監督でオーナー付顧問の岡田彰布がよく言っていたことだ。
「そういうときは本塁打はいらんのよ。タイムリーでつないで、走者を残しながら攻撃していく方が相手はイヤなんよ」。うしろにつなぐ攻撃の重要性を岡田はそう話したものだ。それに習えばこのケースなら満塁弾で1点差にするよりも、適時打で2点を取り、好調の大山悠輔に回していくのがいいのでは、と思って見ていたのである。
しかもいまの佐藤ならそれができるのだ。ルーキーの頃なら「打つか三振か」という感じだったが、今は状況に応じて軽打もできるし、脱力が1つのポイントになると自覚しているはず。実際に8回の打席では軽く中前打を放っていた。そこで期待していたら、状態がよくないときのような空振り三振だったので意外な気がしたのである。
それを受け、この試合も4三振。これで5打席連続三振である。もちろん相手投手にうまく投げられれば、どんな打者でもそうは打てない。わずか1試合の結果だけで、どうこう言うことはないのだろうが、佐藤は明らかに別格の存在だけにそう感じるのだ。
伏兵というと失礼だが新しい顔ぶれが活躍した試合だった。近本光司、そして中野拓夢をスタメンから欠いて出場した福島圭音と岡城快生が活躍しての勝利。そこに小幡竜平も打撃で見せた。そして言うまでもない高橋遥人の好投である。
チームが苦しくなりそうなときに、こんな勝ち方ができるのだから、やはり阪神は強いと思わせるゲームだ。だからこそ次は主砲・佐藤の輝く活躍での勝利を見たいのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




