創部28年目。歴史の扉を、ついに開いた。札幌山の手が北海学園札幌を下して、初の南北海道大会出場を決めた。1点を追う7回2死一、二塁から、エースの9番佐藤圭太(3年)が逆転2点適時二塁打を放った。ここまで今大会無安打だった伏兵の一打で、夏は悲願の地区予選突破。南北大会に出場する地区代表31校が出そろい、南北ともに10日に組み合わせ抽選が行われる。

 リードは、わずか1点。9回2死一塁のピンチでマウンドに集まった内野陣に、札幌山の手のエース佐藤圭は、懇願した。「お願いだから、守ってくれ」。159球を投げてきた変則左腕は、体力、気力とも限界に近かった。仲間を信じて投げた161球目。一飛に打ち取ると、歓喜の雄たけびをあげながら整列に加わった。「ホッとして(試合終了の瞬間は)あまり、覚えていません」。しばらく、興奮は収まらなかった。

 投球で9安打4失点と精彩を欠いたぶん、苦手の打撃でチームを救った。3-4で迎えた7回2死一、二塁。「ピッチングで迷惑をかけてばかりだったから、取り返そうと思った」。変化球を流し打って、走者一掃となる逆転の2点適時二塁打を左中間へ運んだ。今大会3回戦まで5打数無安打。高校入学時に自分のバットすら持っていなかったという男が、ここ一番で大仕事をやってのけた。

 今年で創部28年目の野球部にとって、悲願の南大会出場だ。春は05年に全道大会4強入りも、そこからの道のりが長かった。08年には部員の不祥事により3カ月の対外試合禁止処分を受けるなど、つらい時代もあった。12年夏には地区予選代表決定戦で、札幌大谷に延長10回0-1で敗退。ただ、その敗戦を見て「ここに入れば甲子園に行けると思った」(佐藤圭)という世代が翌春に入学し、新たな歴史をつくった。

 北海道の高校球児にとっての聖地、札幌円山球場から3キロほどの場所に校舎を構える。「授業中に試合開始のサイレンが聞こえると、何で自分たちはここにいるのだろうと悔しかった」と高畠大地主将(3年)。女子バスケットボール部をはじめ、ラグビー、陸上、女子バレーと、全国大会常連の体育系クラブを抱える道内屈指のスポーツ強豪校。野球でも、一気に全国の舞台を狙う。【中島宙恵】