阪神小川一平投手(26)は右肘の手術痕を見つめて「大谷翔平さんとほぼ一緒やんって言われます」と笑う。昨年9月に「右肘内側側副靱帯(じんたい)再建術」(通称トミー・ジョン手術)を受けた。オフには友人、家族から「トミー・ジョン手術って大谷翔平が受けたやつだよね」と声をかけられた。

「大谷さんがしてくれているから、分かりやすいですよね。トミー・ジョン手術=野球選手がするものっていうイメージがついていますよね。説明しなくていいから、逆にラッキーでしたよ」。屈託ない笑顔が、順調にリハビリを進められている証しだろう。

4月上旬にはキャッチボールの距離を35メートルほどまで延ばしていた。「自分はけっこう(リハビリの進行が)早い方」と明かす。キャンプイン前の1月下旬、鳴尾浜の室内でテニスボールを投げ始めるところからスローイング練習を再開。プロ野球選手といえど、久しぶりにボールを投げるのは「難しかった。テニスボールを投げるだけで『うわっ』と思いました」。だからこそ今、硬式球を、強度を上げて投げられる喜びは大きい。

ドラフト1位下村海翔投手(22=青学大)が同手術を受ける時にも会話をかわした。リハビリをスタートさせた後輩の姿を見ながら、小川自身も前を向いている。

「段階を徐々に上がれているので、楽しいですね。焦っちゃいますけどね、遥人さん(高橋)が復活したし、阪神のピッチャーはみんな良いので。でも、また(痛みを)ぶり返すのも良くないので、まずはしっかり治すところから」

ルーキーイヤーの20年は21試合の登板。プロ3年目の22年には開幕ローテーション入りも果たした右腕だ。復活の日を目指し、着実に前へ進む。【阪神担当=中野椋】