山形商が7回コールドで楯岡に逆転勝ちした。1点を追う5回無死満塁で、4番歌丸翔太外野手(3年)が走者一掃の左中間三塁打を放った。先発した初回に2点の先制を許して降板した汚名を自らそそいだ。

 自分がつくった借りは、自分で返す。5回無死満塁、歌丸が内角の甘いカーブを引っ張った。「前が必死につないでくれていた。バッチリでした」。左中間を破る3点三塁打で逆転。この日先発マウンドを任されたが初回3安打で2点を失い、2回からライトへまわっていた。汚名返上の一打で、チームに2年連続の夏1勝をもたらした。

 背負うものがあった。歌丸は3年春まで背番号1を任されていたが、左腕黒沢とエースの座を争った結果、大会前に渋谷良弥監督(68)から背番号9を渡された。昨年6月18日、練習中に倒れて亡くなった同級生のチームメート(当時2年)がつけていた番号だった。「かわりに9番をつけたから、あいつの分まで」。亡き友が背負っていた「9」が、逆転の一打を引き出した。

 春には、全国レベルを肌で感じ取った。渋谷監督が就任して初めて3月末に大阪遠征を行った。PL学園との練習試合では0-23と大敗。歌丸は痛感した。「ボロボロに負けた。大阪のチームは強かった。甲子園に行って、ここでプレーするんだって思えた」。大敗を経験し、逆境を乗り越えて今大会に臨んでいた。

 次戦は春の地区予選で敗れた山形工と再戦する。「絶対リベンジする。チームを勝ちに導けるよう、両方しっかりやりたい」。歌丸の投打の躍動なくして、聖地への道は開けない。【高橋洋平】