風ニモマケズ、小サナ体ニモマケズ-。花巻農の160センチ、50キロの右横手投げエース菊池宜伸(3年)が、盛岡工を5安打1失点に抑えて完投、2-1で退けた。稗貫(ひえぬき)農学校時代に詩人で童話作家の宮沢賢治が1921年(大10)~26年春まで教壇に立った花巻農は、87年以来28年ぶりに16強入りした。

 小さな菊池が大きな完投だ。28年ぶりの16強入り。「うれしい気持ちです」と笑った。速球は120キロに満たなくても右打者へのスライダー、左打者にはシンカーが効果的に決まる。1点を許した7回以外は三塁を踏ませなかった。

 二塁手希望で花巻農に入学したが、投手が足りない事情で、中学時代に経験のあった菊池もその1人になった。当時は上手投げ。1年冬に国保陽平監督(28)から「オーバースローじゃ厳しいぞ」と言われ、「スピードもないし、変則にすれば打たれないと思って」とモデルチェンジした。

 最初は下手投げ。2年春に、下手より変化球がより切れる横手に変えた。経験を積み、試合では何球か下手からスローカーブを投じて打者を手玉に取る。「けん制も練習した」と、5回2死一塁から走者を刺した。3回無死一塁では、投前バントを素早く二塁へ送球して併殺プレーを演出した。

 土木施工、造園施工技術者などの資格が取得できるため、遠野市の自宅から電車に1時間揺られて花巻農に通う。「次勝つと目標としていたベスト8なので」と、同校の夏の過去最高68年8強をにらんだ。通学ニモマケズ、暑サニモマケズ菊池は熱投を続ける。【久野朗】

 ◆菊池宜伸(きくち・よしのぶ)1997年(平9)8月30日、岩手県遠野市生まれ。小友小2年の時、小友スポーツ少年団で野球を始め内野手。小友中では軟式野球部に所属し投手。花巻農では2年秋からベンチ入り。160センチ、50キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄2人。