強い旭実が旭川スタルヒンに帰ってきた。甲子園春夏5度出場の旭川実が帯広柏葉を下し、優勝した10年以来の白星を挙げた。2回裏に3連打で2点先制。1本塁打を含む10安打に7犠打と、大技小技で6点を奪い、そのまま押し切った。主将の冨永凌(3年)は「初戦から全校応援をしてもらい、勝てて良かった」と笑った。

 勝利への執念が攻撃ににじみ出る。2点リードの3回裏、先頭の池尻が右前打で出塁すると、連続犠打で三塁まで進め、得点につなげた。5点リードの8回にも、無死一塁から連続犠打。セーフティーな点差などない。11年春以降、13季連続地区敗退、1点に泣いてきた。だからこそ1点の重みを誰よりも知っている。1つでも先の塁に走者を進め、1点でも多く奪うだけだ。

 昨秋、まだグラウンドに雪が積もる前。ナインは校内に泊まり込み「24時間練習」を決行した。午後1時から始まり、翌日の同時刻まで。ひたすらティーバッティングだけを繰り返した。仮眠を取りながら深夜も振り込むと、1時間300本ペースは100本まで落ちる。トスを上げながら、バットを振りながら、眠気と闘った。ゴールを迎えると達成感から涙する選手もいた。この日先制打を放った8番鈴木は「甲子園に行くにはどれだけ練習をすれば良いかわからない。だったらどこよりもやろう、と。(今は)負ける気がしない」。練習した分が自信となった。

 95年夏甲子園で8強入りした“ミラクル”旋風。99年夏には「全裸にみえるポーズ」でおなじみの芸人・とにかく明るい安村(33)の世代が、16強入りを果たした。低迷期を乗り越え、つかんだ5年ぶり道大会。12年秋就任の坂口新監督(31)に初采配初勝利をプレゼントした冨永は「自分たちが(停滞した)流れを変えよう、と。甲子園にいって監督さんに恩返ししたい」と5年前の再現を期している。【保坂果那】

 ◆旭川実の夏 北北海道大会は79年が初出場で、今大会は5年ぶり16度目。過去15度は優勝3度(95、99、10年)、準優勝2度(01、07年)、4強2度(06、08年)がある。夏甲子園は通算5勝3敗で“ミラクル”と呼ばれた95年に1回戦から3回戦まで全て逆転勝ちでベスト8、99年も1、2回戦を突破して16強入りした。