史上8校目の春夏連覇を狙う敦賀気比(福井)が、延長10回サヨナラで初戦突破した。10回裏2死満塁から、1番篠原涼主将(3年)がサヨナラ中前打を放ち、明徳義塾(高知)を破った。明徳義塾は84年の初出場以来、17度目の出場で初の初戦敗退。

 春夏連覇への扉をこじ開けるサヨナラ安打だ。3-3の延長10回裏2死満塁。敦賀気比の主将、1番篠原の打球が中前へ抜け、激闘にピリオドを打った。

 苦しんだ福井大会決勝の再現だ。エース平沼が序盤3点を失うが、追いつき、延長10回裏に篠原がサヨナラ優勝打。甲子園初戦も同様の展開で公式戦2試合連続大仕事となったが、篠原は「平沼をもっと早く援護できなければ。申し訳なかった」と、まず反省した。

 ナインは敬意を込めて「くそまじめキャプテン」と呼ぶ。甲子園入りして指定グラウンドでの練習は1日2時間。残りの時間で買い物にも出かけられる。だが篠原は大阪市内の宿舎の駐車場付近で、1人でも「納得いくまで」バットを振っている。6回裏に反撃ののろしの今夏チーム初本塁打を左翼ポール際へ高々と打ち上げた2年生の林中は、篠原の練習する姿を思い浮かべ「こんな人が報われる」と確信していた。10回裏は「みんなが篠原へつなげと一丸になった」と東哲平監督(35)は言い「さすがキャプテンです」と喜んだ。

 明徳義塾戦を前に、春に行った儀式が復活した。宿舎近くで行う朝の散歩で、篠原がセンバツの選手宣誓を声に出す。「グラウンドにチームメートの笑顔あり 夢を追いかけ 命輝く」の短歌を含めた約2分の宣誓。春は開会式後も連日散歩時に宣誓を繰り返し、優勝まで突っ走った。

 高校野球100周年の大会で、初の延長戦、初のサヨナラゲーム、そして初の無失策試合となった明徳義塾との2時間13分。東監督はナインを見て「ひと回り強くなる気がする」とうなずいた。史上8校目の春夏連覇へ、最高の形で初戦を突破した。【宇佐見英治】