智弁学園(奈良)が滋賀学園を破り、春夏30勝、春10勝目の勝利で39年ぶりの4強入りを果たした。今日29日は休養日で準決勝は30日に行われる。

 まさに切り込み隊長だった。智弁学園・納(おさめ)がチームに勢いをつけた。初回、先頭打者として左前打で出塁。太田の先制タイムリーでホームを踏むと、2回には右越え2点適時三塁打を放った。「初回は自分の持ち味の粘って合わせる打撃ができた。2回は直球の後は変化球がくるというデータを信じて振り切った」。39年ぶりのベスト4を導いた1番打者が胸を張った。

 2回戦までの屈辱を晴らした。この日まで6打数無安打。「打てないのに使ってくれた監督やみんなのためにも打ちたかった」。悔しさをバットに乗せ、4安打2打点の結果を出した。小坂将商(まさあき)監督(38)から気分転換をうながされ、自分でバリカンで丸刈りにして臨んだ試合でもあった。

 打てないのには訳があった。抽選後の練習でノックの球がイレギュラーで口に当たり前歯が取れた。6針を縫うケガだったがその歯を拾い、歯医者でそのままつけてもらってマウスピースで固定。もう1本別の前歯も欠けているという。小坂監督は「一番練習して、一番努力している選手ですから結果が出て良かった」と目を細めた。タフなリードオフマンにけん引されて、打線は7回まで毎回安打の12安打の猛攻。滋賀学園の2年生エース神村を6回KOしてみせた。

 春10勝目、春夏通算30勝。77年春、選手で春4強を経験した小坂監督は「僕らを越えてほしい」。春初の決勝進出で学校の歴史を塗り替える。【浦田由紀夫】