高松商(香川)が歴史的圧勝で、春51年ぶりの4強を決めた。先制、中押し、ダメ押しの22安打で、同校の春夏甲子園最多の17得点を奪った。海星(長崎)との打撃戦を制し、香川県勢春60勝。学校は春夏合わせて57勝で、智弁和歌山を抜いて単独12位に浮上した。明日30日の準決勝は、サヨナラ勝ちで勢いに乗る秀岳館(熊本)が相手。春56年ぶりの優勝へ、あと2勝だ。

 カクテル光線に照らされた芝生を痛めつけるように、高松商打線は鋭い打球を打ち続けた。甲子園の電光掲示板には驚きの数字が刻まれた。大会史上2位タイの22安打、17得点。51年ぶりの4強は、昨秋の明治神宮大会で頂点まで駆け上がった自慢の打撃でつかみとった。

 突破口はまた植田理が開いた。2回無死三塁。海星先発春田は、前日27日の敦賀気比(福井)戦で5回0封と好投。だが、特徴はインプット済みだった。110キロのスライダーをギリギリまでため、力を伝える。ライナーは勢いよく、左前に弾んだ。「内野手の間をゴロで抜こうという意識でした」。植田理も前日は創志学園(岡山)戦で本塁打。ラッキーボーイによる点火で、この回に2点を先制。春田をマウンドから引きずり降ろした。

 高松商の打撃は「強い打球を打つこと」の徹底にある。普段使うグラウンドはサッカー部と併用。強豪私学と違い、バックネットに向かって打球を打つケースがほとんどだ。長尾健司監督(45)から常に言われるのは「練習は120%」。木製バットを用いて、15分間連続で打ち込む。実際の距離は分からないため、「強く打つ」ことを意識する地道な練習だ。植田理は昨秋の打撃不振後、兄響介の打撃を盗んだ。バットを三塁側に寝かし、速球派の投手への対応を練習。「話はほとんどしない」というが、チームとして追求する打撃スタイルは同じだ。

 植田理に触発され、兄は8回にダメ押しの本塁打。猛打賞の兄を見て、弟は「ライバル意識があるので多く打てた(4安打)のがうれしい」と静かに笑った。不振にあえいでいた1番安西も3安打を含む4出塁。指揮官も「よくできた。安西にヒットが出たのは大きい」とさらなる快進撃を予感した。通算57勝は智弁和歌山を抜いて単独12位。香川県勢60勝到達を踏み台に、頂点まで突っ走る。【松本航】