決勝は智弁学園(奈良)対高松商(香川)に決まった。智弁学園は春夏通じて初の決勝進出。1点を追う9回に3連打で満塁とし、納大地内野手(3年)の中前2点適時打で、2年前の覇者・龍谷大平安(京都)に2-1と逆転サヨナラ勝ちした。

 一塁側ベンチの小坂将商監督(38)までもが、ぐるぐる右腕を回す。三塁から大橋が同点、二塁から中村が逆転のホームイン。サヨナラ打の納は「みんなを代表して打ちました」と胸を張った。77年春、95年夏。はね返された4強のカベを、智弁学園が乗り越えた。

 「信じて、やれ!!」。1点を追った9回の攻撃前。ベンチ前の円陣で、小坂監督はナインの心に火をつけた。猛練習に鍛えられ、固い結束でつながって、今、この場にいるのだと。力の源を思い出させた。

 1死から大橋が中前打。続く打者は中村だ。本来は内野手だが、左腕に強い実績を買って小坂監督は今大会初めて中村を左翼で先発させた。朝食を吐いてしまうほど緊張していた中村は、3回2死一塁の打球処理で後逸。相手の先制点につながった。「やり返そうや!」の声で仲間は中村を支えた。「狙い球も絞れなかった」9回1死一塁。中村は中前にはじき返した。

 青木が右前打で続き、1死満塁。納は指2本分短くバットを持って、狙い通りのスライダーを中前へ。逆転サヨナラ打を見届け、父幸盛さん(44)は泣いてその場から動けなくなった。

 この底力を、小坂監督は信じていた。近畿8強でセンバツを待ちながら「日本一になるぞ!」と言い続けた。太田、福元ら力のある2年が目立つチーム構成にも「下級生をのびのびやらせてやってくれ」と3年に理解を求めた。食トレで練習中に食べる白飯を炊く釜を岡沢主将らが率先して洗う姿を見たとき、チームの一体化を確信した。大会開幕後は「甲子園でうまくなろう」と監督は言い続けた。

 95年夏、小坂監督が主将として率いたチームは阪神福留を擁した優勝候補PL学園を倒しながら、星稜に敗れた。その4強のカベを、教え子は越えた。「日本一になる」。思いはいよいよ1つになった。【堀まどか】

 ◆準決勝の逆転サヨナラ勝ち センバツでは63年北海8-7早実以来、53年ぶり2度目。北海は2点リードされた9回裏、1点を返した後に吉沢勝が逆転サヨナラのランニング本塁打。