第98回全国高校野球選手権大会の出場校を決める熊本大会は23日、組み合わせ抽選会が開かれた。4月中旬の熊本地震で被災し、プロ野球の巨人-中日などが中止となった藤崎台県営野球場(熊本市)を主会場に10日に開幕し、決勝は25日の予定。被害の大きかった地域にある御船(みふね)は初戦でシード校必由館との対戦が決まり、たくましく戦うと決意を新たにした。

 午前中まで大雨の続いた熊本市内で、組み合わせ抽選会が行われた。御船の今村夢運人(むうと)主将(3年)は夏本番を前に闘志満々。全チーム主将の抱負が寄せ書きされた大会旗が掲げられる檀上で、声高らかに校名をさけんだ。14日に県営八代野球場で行われる初戦はシードの必由館戦に決まった。だが臆することはない。寄せ書きに「一戦集中」と記したように、「仲間と1試合でも多く勝てるように頑張りたい」と気力は充実していた。

 同校は最大震度6弱の地震の影響で、いまだ約200人が避難所で暮らす御船町にある。4月中旬から約1カ月、休校となり学内は立ち入り禁止。グラウンドも避難所として開放された。最も被害の大きかった隣の益城(ましき)町から通う部員の中には、自宅の倒壊で引っ越した生徒もいる。部員21人の多くが一時避難所や車中泊での生活を強いられた。

 練習を再開したのは5月11日から。多くが地震によるストレスを抱え、3日間は個々のペースを優先する自主トレの形だった。震災後の実戦は公式戦1試合を含む3戦のみ。それでも今村主将は「ブランクは言い訳にはしたくない。自分たちの野球を貫きたい」と強気だ。支援物資を運ぶボランティア活動を通じ「野球をやらせてもらい両親に感謝しています」と感じた。多くの支えに感謝しながら、ひたむきに、強豪相手の初戦突破を目指す。【菊川光一】