第1シードから4回目の夏の甲子園出場を目指す常葉学園橘は、エース谷脇亮介(3年)が心身共に充実し開幕を迎える。今春、自己最速の144キロを記録し東海大会を制した右腕は、武器となる直球の質をさらに高め、過酷な夏を勝ち抜く投球術も覚えた。あくなき向上心でさらなる成長を目指し、チームを聖地へ導く決意だ。

 エース谷脇に油断はない。春は県大会に続き東海大会を制し、一段と注目度と評価を高めたが「テングにならず、謙虚にやっていきたい」と冷静だ。最速144キロ右腕が求めるのは「スピードよりキレ」。練習でも1球1球、入念に投球動作を繰り返し確認する。谷脇のフォームは力感にあふれ、リリース時に一塁側に体が傾くのが特徴的だ。

 谷脇 上半身と下半身の連動性を意識してます。体の傾きも小さくなったし、踏み込んだ左膝が開かずに力が伝わるようになりました。真っすぐのキレもよくなった思います。

 昨冬からロープを使ったトレーニングで下半身を鍛えた成果も出てきた。ユニホームのズボンがMからLサイズになり「お尻が大きくなったと言われます」と、照れ笑いを浮かべた。

 小林正具監督(53)もエースの成長を認める。「今まではすべてに全力でしたが、今年は力の抜き方を覚え、勝負どころでギアを1段上げられるようになった」。過酷な夏の連戦を見据えた豊富な実戦経験の中で、自然と投球術を身に付けた谷脇。それでも「まだ60点。技術だけでなく、走者を背負ったときや、打たれた後の切り替えなど、気持ちの部分も大切」と、さらなる成長を誓う。

 今月3日の大府(愛知)との練習試合では、初回に制球を乱し1失点も、その後は高い修正能力を見せて9回を5安打2失点完投。18日の初戦(沼津高専-沼津工の勝者と対戦)へ向けて仕上がりは順調だ。「自信はあります。甲子園に行きたいです」と谷脇。心身共に成長したエースが、常葉学園橘を112校の頂点に導く。【鈴木正章】

 ◆谷脇亮介(たにわき・りょうすけ)1998年(平10)4月26日、浜松市生まれ。右投げ右打ち。蒲小2年時に三重に転居し有緝インパルスで野球を始める。小4で浜松に戻り浜松蒲野球スポーツ少年団でプレー。丸塚中3年春に県大会準優勝。常葉学園橘に進学後は2年夏からエース。父の邦宏さんは元ヤマハ投手。180センチ、78キロ。

 ◆静岡県大会の春夏連続優勝 過去の連覇は、52年に静岡商、65年に東海大一、99年に浜松工、13年に常葉学園菊川、15年に静岡が達成。春の優勝校が、夏も優勝した例は少ない。