夏3連覇を目指す静岡への挑戦権は藤枝明誠が、劇的に獲得した。中田海斗主将(3年)のサヨナラ本塁打で誠恵を3-1で退け、2回戦進出を決めた。両校先発投手が力投し、1-1で迎えた9回裏に、頼れる主将が大仕事をやってのけた。明日18日、草薙球場でシード校の静岡と対戦。選手は秋季大会3位の実力で、甲子園への道を切り開く決意だ。

 息詰まる投手戦で迎えた9回裏、先頭の4番伊藤翼咲(3年)が捕邪飛に倒れ、続く江野瑞紀(3年)が四球で出塁した。だが、6番小林規久(3年)が送りバントに失敗して2死一塁。サヨナラムードはついえたかに見えたが、中田海は諦めていなかった。

 2ストライクと追い込まれての3球目だった。真ん中高めのスライダーを振り抜くと、打球は左翼芝生席で弾んだ。静岡への挑戦権獲得を決めたサヨナラ2点本塁打。ガッツポーズを繰り返し、かみしめるようにダイヤモンドを回った。

 中田海 うれしいです。体が勝手に動いた感じで、打った瞬間の感覚がないほど真芯で捉えた打球でした。出迎えのみんなも笑顔で最高でした。

 プロ注目の強打者・伊藤に続く5番が定位置だったが、この日は7番での起用。次につなぐことを意識して打席に入っていた。「正直、悔しい思いはありますが、自分の仕事をと思っていました。『自分で決めよう』と思っていたら、ホームランになっていなかったかもしれません」。光岡孝監督(38)も「うちは『(伊藤)翼咲のチーム』といわれますが『海斗のチーム』なんです。何度も涙を流しながら、泥くさく頑張ってくれた。海斗に感謝ですね」と賛辞を送った。

 抽選会の時から、「1回戦に勝って静高に挑む」が、今大会最初の目標になっていた。それをクリアし、指揮官は「これ以上ない勝ち方で挑んでいけると思います。うちは向かっていくだけですが、1つ経験できたのは有利に働くと思います」と言った。一方で、中田海は「静高といっても特別に意識せず、今までやってきたことを試合で出すだけ。力を出せれば負けないという自信はあります」と言ってのけた。中1日で調整し、多くの高校野球ファンを熱くさせる戦いに臨む。【鈴木正章】