豊中ローズをぎっしり埋めた観客から「まるで(日本ハム)大谷やな!!」の声があがった。最速148キロ左腕・寺島が、この日は強打者・寺島の顔も見せた。

 7回2死一塁。前を打つ井町大生(だい)捕手(3年)の2ランで6-0。打席に入りながらベンチを見れば、岡田龍生監督(55)が「ホームラン、狙え!」とエアスイング。完璧なスイングで指示に応えた。右翼の防球ネットに突き刺すような弾丸の12号アーチ。「本塁打でサヨナラ(コールド)を決めたのは初めてです」と一塁手前でガッツポーズの寺島。指示した岡田監督も「7回で(コールドを)決めるにはホームランしかないと思い“狙え”と言ったんですが。T(-岡田=オリックス)にも山田(ヤクルト)にも、言ったことはなかったですね」と元4番のエースの打力にかけた。

 登板は志願だった。先発予定の山口裕次郎投手(3年)が前日18日に寝違え。一夜明けてかなり回復したが、寺島は「それなら万全な自分が投げます」と申し出た。1回戦・関大第一戦の4回3安打1失点から中2日で、最速144キロ直球を軸に7回4安打9奪三振無失点。阪神和田SAら8球団の編成担当の前で「自分がスカウトとして見てきた中で、最高の高校生の左投手」(中日米村スカウト)と言われる投球に、打力も証明した。

 高校2年の夏は、昨年の7月19日に終わった。初戦(2回戦)で大阪桐蔭に5失点完投負け。真夏が来る前に、秋への挑戦が始まった。今年の7月19日は7回コールド。二刀流の活躍で、自身初の甲子園にまた1歩近づいた。【堀まどか】