全国高校野球選手権新潟大会は、きょう21日の準々決勝で再開する。3年連続6度目の準々決勝進出を決めた帝京長岡は、同校初の4強以上を目指して昨夏の覇者・中越と対戦する。長岡市内のライバル校対決に、心を奮い立たせているのが5番打者の五十嵐啓太(3年=右翼手)だ。4回戦までの3試合は11打数6安打3打点。好調な打撃で8強の壁を越え、一気に頂点まで駆け上がる決意だった。

 好調な打撃が、闘志あふれる五十嵐啓の顔に快活な表情をつけ加えていた。「勝つ気満々です。勝つしかない」と気合の入った言葉もサラリと口にする。3試合を終えて11打数6安打の打率5割4分5厘。「低い打球で塁間を抜いて、次打者につなげたい」と持ち前のスイングに徹して、中越戦も安打を量産する構えだ。

 帝京長岡がどうしても越えられなかった8強の壁を、五十嵐啓がバットで打ち砕く。5番打者は得点機会が数多い打順。「チャンスに打席がメッチャ、巡ってくる。楽しい」と言う。今夏は毎試合1打点ずつの計3打点だ。「今年は絶対、4強以上。甲子園も狙いたい」と、野球部の新しい歴史を切り開く。

 背番号17ながら五十嵐啓は先発の右翼手。練習を休んでいる間に、結果を出した金沢涼平(3年)に背番号9を譲った。というのは、6月に腰痛に見舞われ、医師に「1週間は練習を休め」と厳命された。軽症だったが、大会直前の大切な時に故障。「ヤバイな、と思った」と言う。野球ができる喜びをグラウンドにぶつけているのが、夏好調の要因だ。

 甲子園は兄弟二人三脚で目指している。双子の弟章太(3年)は控え捕手ながらチームの主将。長岡市の自宅では試合の反省など、話題はもっぱら野球だ。五十嵐啓は、フォームチェックのための素振りを時折自宅で行うが、弟章太の前ではやらない。「アイツは隠れてやるタイプ」と主将は、兄の影の努力を評価していた。

 8強の中には長岡市内の5校が入った。長岡大手の池田誉等(たから=3年)は宮内中時代の仲間。ライバルが身近にひしめくだけに、そう簡単には負けられない。「長岡の高校が8強に多く残って、すごいなと思う」。五十嵐啓は“すごい”中から抜け出す覚悟だった。【涌井幹雄】

 ◆五十嵐啓太(いからし・けいた)1998年(平10)8月11日、長岡市生まれの17歳。宮内中卒。野球は宮内小3年から宮内ファイターズで開始。昨夏は2回戦の長岡向陵戦で6番、左翼手として先発(3の0)。昨夏の出場はこの1試合だけ。左投げ左打ち。174センチ、62キロ。血液型O。