2年連続甲子園を目指す履正社(大阪)は、プロ注目スラッガーの3番安田尚憲内野手(3年)が松井秀喜(星稜)に並ぶ通算60号を放った。

 プロ注目スラッガー、履正社の安田が60号発進だ。初戦の常翔啓光学園戦。6回2死三塁で第4打席を迎えた。カウント2-1から、2球ライト線へ鋭いファウルを打った。6球目。真ん中のチェンジアップを振り抜くと、打球は大きな弧を描き、右翼スタンドへ。高校通算60本塁打とする2ランで7回コールド発進を呼んだ。

 我慢の打席が続いた。第3打席まで3連続四球。1度もバットを振ることはなかった。「四球が続いていて苦しい打席でした」。たまったストレスを最後の最後に振り払った。あこがれの松井秀喜氏が高校時代に記録した60号。「早い段階で、と思っていた。目標にしていた数字です」。試合前には松井氏の著書「不動心」を読んでモチベーションを上げるほど尊敬するだけに、笑顔いっぱいだ。

 大切な先輩への思いも胸にあった。今大会前、昨夏の甲子園出場メンバーで関大野球部の福田観大さんが、水難事故のため、18歳の若さで亡くなった。福田さんは昨夏の甲子園で、1番打者として打線をけん引。安田は中学時の所属チームも一緒で「信じられなかった…」。この日は昨年作られた、福田さんらメンバーの名前入りタオルをベンチに持ち込んだ。安田も「なんとか甲子園に持って行きたい」と聖地への気持ちを強くしていた。

 岡田龍生監督(56)は「いつまでも毎日生きていけるわけではない。1日1日一生懸命やらないと。福田の分まで後輩らには野球をやってほしいと思います」と話した。多くの思いも背負い、2年連続となる夏の代表を目指す戦いが始まった。【磯綾乃】