<君の夏は。>

 市川越(埼玉)メンディス海投手(3年)の夏が終わった。同じ公立校の北本に0-1で敗れた。14三振を奪ったが3回に失った1点に泣いた。次打者席で試合終了の瞬間を迎えると泣き崩れた。「3回の失点が敗因。みんなに申し訳ない。2死までいったのに制球ミス。スプリットが高めに浮いてしまいました」。

 1年前。同じ7月18日。同じ4回戦で浦和学院と対戦。8回を無失点に抑え1-0での勝利に貢献。スリランカ人の父を持つ16歳の少年は一躍ヒーローになった。それから1年。偶然にも同じスコアで今度は敗者となった。

 新井清司監督(61)と甲子園に行くことはできなかった。県外の私立校から特待生で誘われていたが、同監督を慕い市川越を選んだ。勉強が苦手だったが中3の夏休みに1日10時間の猛勉強で合格した。

 1年の秋。某私立校との練習試合で打ち込まれた。「あっちの投手を取ればよかった」と監督に突き放された。相手投手は同じ左腕。市川越に来る可能性もあったという。ショックだったが、この言葉に奮起した。2年夏には「1番」を背負い8強入りした。最後の夏。大会前に意気込みを聞くと「新井先生を甲子園に連れて行く」と即答した。

 「新井先生を甲子園に連れて行けなかったことは一生悔いが残る。ここで胴上げできなかったことは本当に悔しい。大学で野球を続けますが、そこで成長した姿を見せることで恩返しがしたい」。そう話すと、吸い込まれそうなきれいな瞳から、また涙があふれた。【福田豊】