東奥義塾が8-3で三本木を下し、11年ぶりのベスト8進出を果たした。1年生右腕の神樹(じん・いつき)が先発、5回を8安打3失点の力投。捕手は神聖斗(じん・せいと=3年)で、神神バッテリーが試合をつくった。キリスト教系の古豪が「神」パワーで復活だ。

 神神ってる快勝だ。公式戦初登板の神樹が1、2回を0点に抑え、チームにリズムをつけた。172センチ、57キロのスリムな体で、直球にスライダー、シンカーをていねいに投げ込んだ。神聖斗捕手との息もぴったり。奪三振は3個と打たせて取った。

 先発は試合前日に告げられた。「緊張せず試合に入れた。3失点は納得いかないが、変化球で三振を取れたし、よかった」と神樹は初々しい笑顔をみせた。投球を受けた神聖は「普段より調子がよく、リードしやすかった」とルーキーの神をねぎらった。珍しい名字の2人だが親類ではないという。

 神樹の父幸久さん(55)は五所川原工野球部の監督を2度、通算28年務め、92年夏には決勝で弘前実に善戦。惜しくも甲子園を逃した。またベスト4にも2度進出の名指導者。今春の異動で弘前工から五所川原工に戻った。五所川原工は15日に初戦敗退。新チームスタートから幸久さんが3度目の監督に就任したばかりだ。

 幸久さんは「本人は登板はないだろうと言っていたが、準備はしておけと言った。体がきゃしゃだがコントロールがいいのが強み。よく投げてくれた」と喜ぶ。神樹は「中学のころはよく試合を見に来てくれ、投球のアドバイスもしてくれた」と父に感謝する。

 神樹の粘投が、2番手の左腕稲葉康太朗(3年)の4回無安打無失点、打線の16安打爆発を呼んだ。神樹を先発起用した工藤秀樹監督(39)は「神樹で行けるところまで行って、3失点まで我慢。ゲームプラン通り、よく投げてくれた」とたたえた。ベスト8がかかる大事な試合にルーキーの先発。「経験は大事だが、経験豊富か、でなければ全くない方がいい場合もある」。まさに神がかった起用だった。

 東奥義塾は1872年(明5)創立で青森県で最も古い歴史を持つ。夏の甲子園には81年まで4度出場。準々決勝は第1シード青森山田が相手だが、神聖は「自信がある。必ず勝つ」と神に誓った。【北村宏平】

 ◆「神」姓 神の字がついた名字はかなりあるが、「神」1文字は全国で1万4000人ほど。ルーツは神社、神職といわれる。「じん」と読む名字は青森県、中でも津軽地方に多い。県内での順位は30位前後。