浜松商(静岡)が強敵の飛龍を5-1で破り、2年連続の8強入りを決めた。5回から登板した左腕増田理人(まさひと=3年)は4安打無失点。1回戦から全4試合で途中登板のエースは、14イニング無失点の安定感を見せている。チームの前評判は高くなかったが、1回戦から試合巧者ぶりを発揮。今日23日の準々決勝は、昨夏甲子園出場の常葉大菊川と対する。

 エースの登板が守り勝つ「合図」だった。浜松商は2-1で迎えた5回から増田がマウンドに立った。先頭打者に左前打を許し、犠打と四死球で1死満塁のピンチ。それでも、全く動じなかった。「ランナーを出してもしっかりと集中できていました」。飛龍の3番山元太一(3年)を併殺打に打ち取り、力強く左拳を握り締めた。

 ピンチで本領を発揮するのが、エースたるゆえんだ。7回にもエラーが絡み、再び1死満塁の窮地に立たされた。対するは飛龍の4番比屋根彰人(3年)。だが、増田は「全く意識はしなかった」と言い、得意のスライダーを外角低めに投げ込んだ。結果は、この日2度目の併殺打。8、9回は危なげなく3者凡退に抑えた。そして、1回戦から続く自身の無失点記録を14イニングに伸ばした。

 鈴木祥充監督(54)も増田の快投を手放しでたたえた。「増田が投げると、他の選手も『運命託します』みたいな雰囲気になる。増田も緊張感を楽しんでいますね」。昨夏は4回戦の静岡戦(4-3)で衝撃のデビューを飾った。6回から公式戦初登板。80キロ台のスローカーブを駆使し、静岡の強力打線を封じて4回無失点に抑えた。

 一転、新チーム結成後は苦労続きだった。昨秋は県大会出場を逃し、春も県1回戦敗退。増田は期待の大きさに押しつぶされそうになり、絶対的エースにはなれなかった。だが、この夏を前に決まった「基本は継投策、増田はリリーフ」のチーム方針が奏功した。「先発で試合を作るより、前の投手が抑えてくれてからの方が安心感を持って投げられます」と増田。言葉通り1回戦からのリリーフ登板で、輝きを取り戻している。

 4強進出を懸け、今日の準々決勝は常葉大菊川と対する。今春の西部地区大会では4点リードの9回に、逆転サヨナラ負けを喫した相手だ。増田は「気持ちで逃げたら打たれる。強気でいきます」。リリーフで輝く背番号「1」。その目は、チームを17年ぶり夏の甲子園出場に導く決意に満ちている。【神谷亮磨】