今春センバツ4強の報徳学園(兵庫)が、劇的な勝利で、4年ぶりとなる夏準決勝へ駒を進めた。延長10回にサヨナラ勝ち。1-1で迎えた無死三塁の場面で試合を決めたのは、9回から出場していた8番山本燎平内野手(3年)だった。相手は最速147キロの市西宮のエース山本拓実投手(3年)。打者山本はスライダーに狙いを定めた。狙い通りの球を、左へはじき返し、公式戦初のサヨナラ安打。前日に仲間から掛けられた「同じ『山本』として負けんな」という言葉を現実のものにし、歓喜の輪の中心になった。

 1年前の新チーム発足時は、レギュラーではない「Bチームの主将役」だった。Aチームから漏れた同期約20人のまとめ役だが「向いていないのに…」と感じていた。そんな山本に、今春勇退した永田裕治前監督と当時部長だった大角健二監督(37)は「Aチームに這い上がってこい」とハッパをかけていた。その言葉を胸に山本は努力を続け、春に初めてメンバー入り。大角監督が「どんなときも腐らず、前向き。ベンチでも前向きになるような声掛けをしている」と、姿勢を評価する男が大仕事をやってのけた。

 この日、打席に入る前にも、2人の指揮官の言葉を思い出していた。「しんどかったら、スタンドを見ろ」-。スタンドには一緒に練習に励み、声をからして応援してくれる仲間の姿があった。「みんなが作ったチャンスで、みんなの力で打ったサヨナラ」と山本。10年以来7年ぶりとなる夏の甲子園へ、あと2勝だ。【中島万季】

 ◆山本燎平(やまもと・りょうへい)1999年(平11)7月26日、大阪市生まれ。関目東小2年で「関目東ライオンズ」で野球を始め、菫中では軟式野球部に所属。報徳学園では今春センバツからメンバー入り。50メートル走6秒4。173センチ、70キロ。右投げ右打ち。