元阪神の中谷仁コーチ(38)が甲子園に帰ってくる。中谷氏が今春から専任コーチを務める智弁和歌山が紀央館との接戦を制し、2年ぶり22度目の甲子園を決めた。先発の黒原拓未投手(3年)が、8回途中7安打2失点と力投。黒原は「背番号1のピッチングにはいらない2失点だった」と苦笑いしたが、中谷コーチに野球のイロハを教わり、和歌山の頂点に立った。

 中谷コーチは黒原に「自信を持って投げろ」と投球の基本から熱血指導。「(練習では)そんな甘い球を投げていたら話にならないなどと言います。時には放送禁止用語も出ます」とジョークを交えて明かした。怒る時は怒るが、選手の体調に気をつかって声をかける。黒原が少し肘を痛めていたのを黙っていた時は、「ちゃんと言いなさい」と注意。プロ14年間で学んだ経験と知識を生かし、今春のコーチ就任から4カ月でナインを聖地に導いた。

 甲子園歴代1位の63勝を誇る高嶋仁監督(71)は「中谷コーチはいっぱい教えるが、選手がそれを消化できていない。それを消化できるようになったら、もっとよくなる」と苦笑いで感謝した。中谷氏は97年全国制覇した当時の主将で、同年阪神ドラフト1位。タテジマでの1軍出場17試合にとどまった。帰ってくる甲子園での目標は、もちろん優勝だ。【星名希実】

 ◆中谷仁(なかたに・じん)1979年(昭54)5月5日、和歌山県生まれ。智弁和歌山時代は96年センバツ準優勝、97年夏は全国制覇。同年ドラフト1位で阪神入団。05年オフに楽天にトレード移籍。11年に楽天を戦力外になり、12年は巨人でプレー。同年で現役を引退した。プロ通算成績は111試合、4本塁打、17打点、打率1割6分2厘。今春から智弁和歌山の専任コーチに就任。