十勝地区は、帯広農が今夏の北北海道大会で8強の帯広大谷を5-3で下し、09年以来8年ぶりの全道大会進出を決めた。先発したエース前田圭太(2年)が6回1/3を2失点と流れをつくり、2-2の8回無死満塁からは右翼線に二塁打を放ち、決勝点をもぎ取った。十勝地区からは白樺学園、函館地区は函館工と函館大柏稜が代表切符を勝ち取った。

 帯広農・前田が気合で1点をもぎ取った。2-2に追い付いた直後の8回無死満塁。相手は今夏の北大会8強メンバー7人が残る帯広大谷だ。「とにかく気持ちで負けないことだけ考えた」。真ん中高めの直球をフルスイングすると、やや詰まり気味だったが、右翼線ぎりぎりにぽとりと落ちる幸運な適時二塁打となった。

 この日は先発し、6回1/32失点。粘りの投球を披露したが7回途中で降板していた。「投球は5回以降、スタミナがなくなって全然だめだった。何とか打撃で貢献したかった」。降板直後の打席で、貴重な決勝点をもたらした。

 台風接近の影響で代表決定戦が1日、順延となった。前田康晴監督(41)は当初、背番号10の葛巻和也(1年)を先発で考えていたが、順延が決まった17日午後に「やっぱり節目の試合はエースかな」と方針転換。18日の練習がオフだったため、17日夜に携帯メールで先発を伝えた。意気に感じたエースは「分かりました。全道切符をつかみます」と自信たっぷりに返信し、有言実行。監督の直感と背番号1の使命感が、しっかりリンクした。

 実家は、音更町で41ヘクタール(東京ドーム約9個分)の畑を営む農家。中学までは収穫時に芋掘りや出荷作業を手伝ってきた。だが、父昭彦さん(50)から「高校3年間は野球に集中しなさい」と、入寮した昨春から免除。この日、午前の農作業を早めに済ませ、約30キロ離れた球場まで応援に駆け付けた父と母知加子さん(44)に、まずは全道切符で恩返しした。

 今夏の江陵との地区代表決定戦では、8回から登板も、9回2死二塁でサヨナラ2ランを浴びた。「僕のせいで先輩の夏が終わった。自分たちの代で、その借りを返さないと」。自身初の全道では、屈辱の夏の分まで大暴れし、支えてくれる両親にセンバツ切符を贈る。【永野高輔】