明治神宮野球大会に初出場する聖光学院(東北・福島)は“3本の矢”で形成する強力投手陣を擁し、初優勝を狙う。最速141キロの本格派エース右腕衛藤慎也(2年)を中心に、高い制球力で丁寧にコースを突く右腕の上石智也(2年)、横手投げの変則左腕高坂右京(2年)ら、タイプの違う3投手をそろえる。今日12日の初戦(準々決勝)で創成館(九州・長崎)と対戦する。厚みのある投手陣を生かし、3連戦となる戦いを制してみせる。

 聖光が誇るのは「近年最強クリーンアップ」だけじゃない。“3本の矢”で初出場初優勝を狙う。7月の右肘手術から劇的な回復を見せた衛藤が秋の開幕に間に合い、エースの座に君臨した。今秋は6戦で先発を任され41回6失点。「聖光は今まで全国8強が最高。先輩たちから託された日本一を、まずは神宮で取りに行く」と意気込む。

 高1の5月に捕手から投手に転向してわずか1年半で、右の本格派に成長した。上手から最速141キロの威力ある直球を投げ込み、縦と横のスライダーなど多彩な変化球を操る。「東北大会の後半は球が走ってなくて、内容的にも良くなかった。原点に戻る」。神宮まで筋トレで体を作り直し、秋開幕から2キロ増やして78キロまで増量。ここまで衛藤を駆り立てるのは上石、高坂の存在だった。

 衛藤 3人ともタイプが違って競っている状態。自分の尻に火がついている。

 衛藤に負けじと、上石と高坂が虎視眈々(たんたん)と登板機会を狙う。東北大会ではともに1イニングしか登板機会がなかったが、2人は「投げたくて仕方ない」と対抗心を燃やす。秋の県大会で背番号1を任された上石は、衛藤と特長の違った右上手投げで制球力が光る。丁寧にコーナーを突く安定した投球は、衛藤を上回る。高坂は今春に肘を横手に下げ、頭角を現した。癖のある微妙に動く直球を武器とする。

 初優勝のためには、3連戦を乗り越えなければならない。神宮初采配となる斎藤智也監督(54)は自信を見せる。「衛藤が頭1つ抜けている状態だったが、東北大会が終わってから2人の調子が上がってきて、差が詰まってきた。3本柱と言ってもいいね」。投打に充実する聖光学院が神宮の杜(もり)で暴れまくる。【高橋洋平】