静岡・常葉大橘は、4番の夏目大捕手(3年)が「理想の主将」となり、6年ぶりの夏の甲子園出場を目指す。昨秋は県3位で東海大会に出場するも、今春は県1回戦で敗れ、夏はノーシード。夏目も打撃不振に陥り、表情も沈みがちだった。そこで、部員たちに「理想のキャプテン像」を問い直して気持ちを整理。笑顔とパワフルな打撃を取り戻し、チームをけん引している。

 常葉大橘の夏目主将が、吹っ切れたような笑顔で言った。「みんなにとっても最後の夏で、後悔はしたくない。自分がキーマンだと思っています」。

 今春の県大会は、1回戦で知徳に2安打完封負け。5月の練習試合でも連敗し、責任を感じていた。片平恭介監督(30)や副将の加部郁哉内野手(3年)からも「顔が暗い。試合中に悩んでいるように見える」と指摘された。「何かを変えなきゃいけない」。意を決した夏目は、今月初旬、選手寮の食堂に紙を用意し、ほぼ全部員から「理想のキャプテン像」について意見を求めた。

 回答は「もっと明るく」「言いたいことをもっと言ってほしい」などで、「もっと、他の3年を頼っていいぞ」の声もあった。すべてに目を通した夏目は、反省した。「自分1人で解決しようとしていたところがありました。聞けて良かったです」。グラウンドでの笑顔が戻り、3年同士の連帯感もより強くなった。

 打撃でも復調の兆しを見せている。好調時は下半身が主導して、上半身の動きがついてくるイメージだが、今春は結果を求めるあまり、「上と下が一緒に回っていました」。現在は好調時の動きを取り戻し、力強い打球が戻ってきた。高校通算14本塁打。「県高校NO・1捕手」の呼び声もあり、以前は「プロに行きたい」と公言していたが、キッパリと言った。「自分がプロどうこうより、『みんなで甲子園』です」。

 本人と仲間たちが求める「理想のキャプテン像」に近づいた時、6年ぶりの甲子園出場が、グッと近づいてくる。【鈴木正章】

 ◆夏目大(なつめ・たい)2000年(平12)6月7日、浜松市生まれ。三ケ日西小2年から三ケ日ジュニアファイターズで野球を始める。常葉大橘中2年から捕手に。右投げ左打ち。家族は両親と姉、妹。180センチ、82キロ。血液型B。