北北海道大会の釧根地区では、釧路江南が標茶に6-1で快勝し、7年ぶり29度目の北大会を勝ち取った。

 守備職人の9番打者が、バットで勝利を引き寄せた。1点を奪われ、2点差に迫られた直後の8回2死満塁、釧路江南の永戸海渡(3年)は初球を迷わずに振り抜いた。「前の打者が敬遠みたいな感じで歩かされたので悔しかった」。思いを込めた打球は、鋭く左翼線を抜ける走者一掃の二塁打となった。

 「永戸が勝負どころでよく打った。あの3点が大きかった」と楓川(もみじがわ)卓也監督(44)。初回は2死一、二塁から主軸の5番布施健太郎(3年)の中越え適時二塁打で2点を先制し、守っては3投手を適所で投入し1失点と、チーム一丸で7年ぶりの北大会切符をつかんだ。

 情報共有を徹底した。29日の標茶-白糠戦をスタンド観戦し、相手投手の特長を確認。スライダーのキレがあることを知った秋田理玖主将(3年)は、打席のやや前に構え「曲がる前に打とうと思ったら、ばれたのか、直球が多くなったので、直球狙いに変えました」と言う。試合中に各選手が考え、次打者に伝え、投手とのかけひきに勝った。

 現チームの部訓は「不如木鶏(もっけいにしかず)」。中国の故事成語で「何事にも動じない」という意味の「木鶏」に、漢文で「最上級」という意味を持つ「不如(しかず)」を加えたもので、国語教師の楓川監督が昨秋につけた。4回から7回まで無得点。8回表に失点し流れが変わりかけたが、直後に攻略する展開に、同監督は「選手がピンチから逃げず、部訓のような試合を体現してくれた」と喜んだ。

 夏の甲子園には77年まで4度出場。グラウンドのバックネットには「北北海道制覇」の横断幕が張られている。「まずは1つずつ。何とか全員の力を合わせて甲子園に行きたい」と秋田。強豪相手にも静かに闘志を秘め、木鶏のごとく、41年ぶり聖地を狙う。【永野高輔】