雨にぬれても完封への熱意は冷めなかった。浦和学院(南埼玉)・渡辺は9回2死、二松学舎大付(東東京)の代打堀川を、自信の144キロで二ゴロとし109球で完封。打者のバットを拾い、手渡す心配りも見せた。「気持ちよかったです。誰もが夢見る甲子園で完封できて、うれしい」。6-0で32年ぶりの8強入りを決め、顔をほころばせた。

 マウンドは譲りたくなかった。7回終了後、森士(おさむ)監督(54)から継投を打診されたが「いかせてください」と直訴した。指揮官は「(6番の)左打者に回ったら9回2死でも代える」と通告。8回以降はギアを上げて3者凡退とし、完封。それでも「わがままを聞いていただきました。今日は90点。抜けるスライダーがあったので、修正したい」と反省した。

 天性の投手だ。今夏県大会前、「直球だけでは勝てない。小さく動く変化球がほしい」と決意。ブルペンに入り、投げた初球。微妙な変化をする見事なツーシームが決まった。わずか1日で習得。投球の幅が広がった。中学時代からケガに悩まされ、2年秋に右肩を負傷。憧れのエンゼルス大谷の投球フォームを研究した。体重移動など、下半身の使い方を重点的に動画でチェック。軸足にしっかり体重をかけ、長身で柔らかく腕を振り下ろす姿から、投球後の動作までそっくりに仕上がり「しっくりきた」。OBの木塚敦志(元DeNA)、三浦貴(元巨人)、大竹寛(巨人)らを指導してきた27年目の監督から「右ではナンバーワン。ポテンシャルは渡辺が一番上」と期待される逸材だ。

 甲子園初戦は4人の継投で勝ち、3回戦では完封と8強で唯一無失点を誇る。最強投手陣の軸になる背番号11は「浦和学院の歴史を、塗り替えられるように頑張りたい」と頂点を見据えた。【保坂恭子】

 ◆渡辺勇太朗(わたなべ・ゆうたろう)2000年(平12)9月21日生まれ、埼玉県羽生市出身。小学1年、手小林ブラックスで野球を始め、羽生東中軟式野球部から浦和学院入り。持ち球は直球、カーブ、2種類のスライダー、スプリット、ツーシーム。最速149キロ。遠投100メートル。趣味は音楽を聴くこと。家族は父、母、2人の兄。兄の名前は将太朗、亮太朗。190センチ、90キロ。右投げ右打ち。