来春のセンバツ(3月23日開幕、甲子園)の重要参考資料となる秋季高校野球東北大会が、明日12日から秋田で開幕する。例年、東北からは決勝進出の2校が一般枠でセンバツに出場している。「みちのくプラス!!」恒例企画、野球記者とデスクの座談会は「異名」「2世」「劇場」「夏春」「古豪」「意地」の6つのテーマトークから、対話形式で注目選手を選出。さらに、出場全18チームの注目選手28人も選び出しました。【取材・構成=高橋洋平】

デスク(以下デ) 金足農(秋田)の吉田輝星投手(3年)がプロ志望届提出を、ついに決断したな。

記者(以下記) 第100回大会の夏の興奮は今でも残っていますが、既に第101回目の夏に向けての戦いは始まっています。

デ 早速いってみよう。「異名」が目につくな。

記 第101回世代のスター候補が酒田南(山形)の伊藤海斗外野手(2年)です。勝負強そうな精悍(せいかん)な顔つきと、クネクネする打撃フォームからチーム内のあだ名は「アナコンダ(大蛇)」です。

デ インパクトのある名前だな。クセがすごそう。

記 まず187センチ、90キロの体格が素晴らしいです。左投げ左打ちの二刀流で、打っては今秋の公式戦5本塁打。投げても最速140キロを誇ります。名前のごとく、1度食らい付いた獲物は逃がしません。

デ 伊藤は昨秋から鮮烈デビューを果たすも、チームは12年夏の甲子園から遠ざかっている。待望の怪物に期待したいな。

記 一方、投手の注目が「2世」です。秋田修英のエース左腕・西岡海斗(2年)が春夏秋通じ、創部56年目で初優勝に導きました。その名はズバリ「中川2世」です。

デ 秋田で中川と言えば、89年夏の甲子園で4強に入った秋田経法大付(現明桜)の1年生左腕が中川申也(元阪神)だったよな。

記 当時の秋田経法大付の監督で、8度の甲子園に導いた鈴木寿宝(ひとし)監督(55)は現在、秋田修英を率いて9年目。投手育成に定評があり、小野仁(元巨人)らを育てています。同監督は西岡に対して「お前は中川2世だ!」と、英才教育を施しています。

デ 176センチの中川よりわずかに低い172センチで、投球術にたけているタイプだな。

記 最速140キロの直球と5種類の変化球を小気味よく投げ込む強気な投球は、まさに「中川2世」です。プレートさばきもうまく、クレバーな投球が光ります。

デ 次の「劇場」とは一体、何なんだ。

記 今、一番東北6県で面白い野球を展開しているのが、盛岡大付(岩手)です。起伏の激しい試合展開から「盛付(もりふ)劇場」の異名が定着しています。今夏の2回戦では佐々木俊輔内野手(2年)が泣きながらサヨナラ打を放って「涙の盛付劇場」を展開しました。同決勝では宿敵花巻東に敗れましたが、今秋は佐々木が4番を務め、夏の借りを返します。

デ 最速157キロ右腕の佐々木朗希(2年)擁する大船渡を攻略した作戦が素晴らしかった。

記 最速172キロの打撃マシン「ローキ君」の打ち込みですね。当時の怪物大谷(現エンゼルス)対策が、今にも生きています。

デ 今夏の甲子園出場チームは当然、2季連続の「夏春」甲子園を狙う。

記 中でも注目なのは、八戸学院光星(青森)の武岡龍世内野手(2年)です。ロッテ田村以来となる入学直後の4月からベンチ入りを果たした左打ちの遊撃手です。2年夏からは長打力が上がっており、同準決勝では3ランを2発かましました。今秋からは主将を任されています。

デ 「古豪」は福島商だろうか。

記 エース右腕の大内良真(2年)の投げっぷりがいいですね。最速143キロの本格派で、投げ終わってからのしぐさに躍動感があります。自信を持って投げたストライクには、捕手に向かって人さし指を突き出しアピールします。

デ 公立校は「意地」を見せたいね。

記 57年ぶりの東北大会出場の古川(宮城)は、エース右腕の千坂優斗(2年)が大黒柱です。地区大会からマウンドを守り続け、仙台育英との決勝の途中で降板するまでの67イニングを投げ抜きました。1年夏から主戦を任され、正確無比の制球が生命線です。

デ 今、東北の高校野球は熱いからな。この中から吉田輝星に続くスーパースターの登場を期待したいね!