センバツ前回大会準優勝の智弁和歌山が、18安打13得点の猛攻で、21世紀枠で初出場の熊本西に13-2で大勝した。

昨夏の甲子園大会後に甲子園通算68勝の名将高嶋仁氏(72)が勇退。重責を受け継いだOBで元プロ野球選手の中谷仁監督(39)は初陣を飾った。第2試合からは2回戦となり、習志野(千葉)と市和歌山がベスト8に進出した。

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伝統の強打で、中谷監督が甲子園初陣を白星で飾った。1点を追う展開で打線に火が付いた。3回に2番西川からの3連続適時打などで一挙4得点。4回はプロ注目の4番東妻が左翼席へ高校通算23号となる3ランをたたき込むなど7点を奪い、試合を決定付けた。「相手に火を付けてもらった試合だった。(本塁打は)入ると思わなかったので全力で走りました」。18安打13得点の打線に加え、4投手による2失点リレーと流れを渡さなかった。

中谷監督はウイニングボールを東妻から受け取った。笑みを浮かべた愛弟子から「監督、ボール」と言われ、「ああそうか、と言って受け取りました」。照れくさそうに笑った。捕手として智弁和歌山で97年夏の甲子園で優勝、阪神などでもプレーした。1年秋から正捕手に座る東妻には人一倍の指導をし、目配りや気配りなど多くを求めてきた。コーチ時代はプレー映像を2人で見ながら話し合うこともあった。快勝で初戦を突破したが、教え子のプレーには「まだまだです。粘り強く守ってくれた。最少失点で切り抜けられたけど完璧ではない。もっと大きく成長していってほしい」と高いレベルを求めた。

この日の朝は高嶋前監督から差し入れでもらったバナナを食べてエネルギーをチャージ。「偉大な監督、偉大な記録。想像できません」。謙遜したが、恩師に1歩近づいた白星。1年前に逃したセンバツ優勝へ、スタートを切った。【望月千草】