何かが降臨した!? 春季岩手県大会開会式で、久慈の渡辺彩斗主将(3年)が選手宣誓した。途中までは順調だった。しかし…。

球場から出てきた渡辺は開口一番「飛んでしまいました」と苦笑い。「家や学校で100回くらい練習してきました」という宣誓文が突然、記憶から飛んでしまったというのだ。「圧迫感というか、前に役員の皆さんがずらっと並んでいて、観客もたくさんいて、後ろには選手たちもたくさんいて…」。

沈黙が10秒を超えたあたりから、ざわつくスタンド。察したスタンド。「頑張れ!」の声が3度飛んだ。「うわうわ…」と焦りながらも、頭の中で記憶を反すうしていた渡辺は約30秒後「急に何かが、って感じでした」。無事に再開し、「令和元年」のメモリアルフレーズも無事に言い終え、拍手を浴びた。

そんな渡辺の姿を、大船渡(岩手)の最速163キロ右腕・佐々木朗希投手(3年)は列に並びながら、目をそらさず、じっと眺めていた。実は渡辺と佐々木は中学時代、Kボールの岩手県選抜チームでともに全国大会を戦ったチームメートだった。当時の試合では右翼を守った渡辺だが、本職は捕手。「佐々木君の球も何度か捕りました」という。当時すでに140キロをマークしていたという快速球は「腕を振った瞬間にボールが飛んでくる感じでした」としっかり覚えている。

あれから3年。「本当にすごいですよね。頑張ってほしいです」とエールを送りながら、渡辺は「ぜひ対戦してみたいですね」と願う。17年には夏の県大会準優勝に輝いた実力校・久慈で、4番捕手を務める。今度は選手宣誓ではなく、バットで目立つことを誓っていた。