水戸一(茨城)の雨谷(あまがい)駿太郎選手(3年)は、味方の勝利の校歌を、一塁側ベンチ前で歌った。ナインとは離れ、両脇を松葉づえに支えられたまま…。

アクシデントに見舞われたのは、つい1カ月半ほど前。つくば国際大東風との練習試合直前のシートノックで、二塁の守備に就いていたが、打球を追って右翼手と激突した。右足腓骨(ひこつ)、脛骨(けいこつ)の骨折。1カ月の入院生活を経て、チーム復帰を果たしたものの、まだ患部を地面に着けることさえできない。歩行までさらに1カ月を要すという。それでも、竹内達郎監督(45)から「背番号20」を託された。

「試合に出られなくても、自分にしかできないことを、精いっぱいやる。そうすれば必ずいいことがあると信じています」と雨谷は言う。試合出場は無理でも、そこに悲壮感はみじんもない。自身は「守備が得意ですが、レギュラーまではいかないんで」と照れるが、竹内監督の評は違う。「選手としても、もちろんですが『三塁ベースコーチ』として、優れた判断力を持っている」。成績優秀で、東大進学をうかがう。クラスではエースの片根崇行(3年)とともに、ホームルーム代表(クラス委員)を務める。

ベンチから声を張り続けた。クレバーな「信号機」の言う通り。どんな境遇でも頑張り続ければ、きっといいことがある。【玉置肇】