佐野東が初戦敗退した。安打数では相手を7本上回る、10安打を記録も、1点が遠かった。

先発した石塚達也投手(3年)は最速143キロを誇る右腕。須永穂積監督(37)も「普通の県立(高校の)打者には打たれないでしょう」と自信を持っていた。

だが、そう簡単にはいかなかった。自分の力で流れを引き寄せることはできなかった。制球が定まらない。先頭打者を9回のうち、5回も四球で歩かせ、8回を投げ計8四死球。「四球やヒット、自分の制球が欠けました」と悔しさを表した。

生まれつき骨格に問題があり、高校1年であばら骨を1本取る手術をした。「生きている分には支障はないが、野球で肩を上げると腕が真っ白になってしまう。投げた次の日は握力がなくなるほど痛かった」。野球に本気で向き合うために決断した。

多くの安打を放っても得点に結びつかなくては意味がない。「ヒットと点は比例しない」と改めて学んだ。「悔しい」と口にしたが、試合終了直後うつむく姿が見られただけで、報道陣の前で石塚が涙を見せることはなかった。「野球は難しい」。苦い味の初夏だった。【佐藤勝亮】