「正直厳しいなと思っていました」。今市・柴田清光監督(46)は本音をこぼした。同校5年ぶりの勝利。「まだ実感が湧きません」。久しぶりの感覚に落ち着かなかった。

スコアに刻まれた数字は7回裏、今市の「5」以外全て「0」。1度のチャンスをものにした。「うちはいつも継投のチーム。今日も3人と思っていたが、代えるタイミングが分からなかった」。フライアウトを重ねて2安打完封した先発の鈴木一成投手(3年)を絶賛し「MVP」に挙げた。

「いつもは1試合、10個以上の四死球ばかり。先月末に眼鏡をかけ始めたら、覚醒しました。今日は完璧です」。5回1死一、三塁、流れを呼び込む先制スクイズを決めた横田星磨外野手(2年)は眼鏡先輩の「覚醒」に驚きを隠せなかった。

その「覚醒眼鏡投手」、鈴木一は「最後の夏で緊張しましたが、周りの人たちが声をかけてくれたので。視力は0・6~0・7です」と謙虚に振り返った。記録した134キロは自身最速。眼鏡で“度”胸も身につけた男が、公式戦初勝利、初完封をかみしめた。【佐藤勝亮】