女子部員の鈴木里菜マネジャー(3年)が主将を兼任する福島高専が、7回コールド0-8で帝京安積に敗れた。

野球未経験ながら今年1月に抜てきされ、この日は記録員としてベンチ入り。精神的な支えとして、1年生が7人を占める11人の若いチームをまとめた。

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肩を落とし引き揚げてくる仲間を、鈴木主将は精いっぱいのほほ笑みで迎えた。主将の意地として、涙だけは見せたくなかった。「いつもは自分が最初に泣いちゃうけど、今日は最後まで笑顔でいようと思った」。強豪との対戦を前に、「楽しんでいこう。緊張するなー!」と笑顔で送り出した。2回まで無失点。6回、1打出れば10点差となりそうな場面でも踏ん張り、もう1イニング戦うことができた。冬の危機的状況を思えば随分、成長した。

新チーム結成時の主将は坂本海斗捕手(3年)だった。しかし、冬場の走り込みを中心とした厳しい練習の過程で6人が辞め、選手は3人に。柳沼仁志監督(40)は「何かを変えないといけなかった。鈴木は一番ものを言える子だったので、そこを買った」とチーム初のマネジャー兼主将に指名。「驚いたけど、自分はプレーができないので精神面でしか支えられないと思った」と覚悟を決めた。

元々野球が大嫌いだった。両親が2学年下の弟結人(湯本1年)に付きっきりだった。「野球のせいで親をとられたのが辛くて」。内郷一中時代はソフトテニス部だったが、入学時に勧誘され、「すごい楽しそうな雰囲気だったので」と野球部への入部を決めた。

5年制の福島高専ではビジネスコミュニケーション学専攻で学ぶ。将来はディズニーランドやUSJなどで企画に携わるのが夢だ。「人を支えることの喜びや楽しさを知りました。自分のやったことでみんなが笑顔になってくれる。夢も固まりました」。後輩には「辛いことはたくさんあるけど、それ以上に楽しいことが増えるはず。最後まで続けてほしい」と、大好きになった野球への熱い思いを残した。【野上伸悟】