初の4強入りした伊那弥生ケ丘(長野)に「遅さ」で勝負の個性派がいる。

小諸商戦でロングリリーフし6回を3安打無失点に抑えたのが、富永悠斗投手(3年)だ。オーソドックスな右のサイドスローかと思いきや、いきなりぐにゃりと腰を折り、そこから大きく三塁側へクロスにステップ。そして、右打者からすると、いきなり背中から右手が出てくるような変則フォーム。3安打はいずれも左打者。右打者はほぼ抑え込んだ。

「もともとはオーバーハンドだったんですけど、スピードが出ないんです。それでサイドスローにして、さらにもっと打ちづらくしようとしてこのフォームになりました」。何を聞かれてもハキハキ答え、ニコニコ笑っている。

驚くのは「遅さ」だ。直球は最速124キロで、カーブは70キロ台。50キロ近い緩急を駆使し「遅さ」と、変則フォームで生き残ってきた。「速いボール投げたいです。でも、出ないものはしかたないです。課題は左打者をチェンジアップで仕留めることです」。163キロが話題になる今の高校球界で、自分のスタイルを作り上げた変則右腕は、ひときわ輝いている。【井上真】